2012 Fiscal Year Annual Research Report
血清NAG活性は総死亡、特に脳心血管死の予測因子となるかの前向き疫学研究
Project/Area Number |
23790713
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉川 邦子 久留米大学, 医学部, 助教 (60569391)
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Keywords | 健康診断 / 疫学 / 死亡率 / 前向き研究 / アセチルグルコサミニダーゼ |
Research Abstract |
NAG(N-acetyl-β-D-glucosaminidase)とは、リソゾーム中に含まれる糖蛋白分解酵素で、血管内皮をはじめとした体内組織に広く分布している。NAGの分子量は大きいため、通常尿中にはほとんど排泄されず、糸球体障害の指標としての尿中NAG活性とは異なる。 わが国では人口の高齢化、食生活の欧米化、運動の減少に伴い、生活習慣病は急速に深刻化し、日本人の総死亡の6割以上がガン、心疾患、脳血管疾患で占められている。そこで、1958年以来、定期的に田主丸町住民検診を行っている我々は、動脈硬化性疾患に血清NAG活性が高いことに着目し、1982年に血清NAG活性を測定した20歳以上の男女1080名を対象とし、約30年にわたる発症調査を行い、血清NAG活性が総死亡、特に脳心血管死の予測因子となり得るかを検討した。横断研究の結果、血清NAG活性値の分布に性差は認めなかったが、年齢とともに増加し、血圧、総コレステロール、HDLコレステロール、尿酸、肥満と正に関連することを報告した。また、1989年の再検診の結果、血清NAG活性が高値を示した正常血圧者は、将来高血圧に進展することを報告した。縦断研究の結果、410名が死亡(103名が癌死、92名が脳・心血管死、58名が感染症)死亡であった。Coxの比例ハザードモデルを用いた分析では、血清NAG活性を4分位に分割した場合、NAGが最も高い群では、最も低い群に比べて、様々な交絡因子で補正後も総死亡のハザード比は1.35 (95% CI, 1.02-1.83)と有意に高値を示した。さらに、単変量ではNAG活性は脳・心血管死の有意な予知因子であったが、交絡因子で補正すると、その有意性は消失した。 今回の検討では、NAG活性の高値は総死亡の独立した危険因子であり、尿中NAGだけでなく、血中NAGを測定する意義は大きいと考えられた。
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