2011 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器感染症病原体共存の意義の解明および新興呼吸器ウイルス分離法の構築
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23790720
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Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
改田 厚 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (50372131)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ウイルス / 呼吸器感染症 / 乳幼児 / 多項目同時検出 / 共検出 / 脳炎 / 脳症 |
Research Abstract |
呼吸器感染症の原因病原体を迅速かつ正確に検出、同定することは、有効な治療法の選択、感染症拡大予防、流行解析の観点から重要である。本研究では、多項目呼吸器感染症病原体同時検出法(multiplex real-time PCR 法)を用いて、臨床検体について、ウイルス18種[インフルエンザウイルス (A, A(H1N1)2009, B, C)、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス(1~4型)、コロナウイルス (NL63, 229E, OC43, HKU1)、アデノウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、ヒトボカウイルス] の検索をおこなった。2010年1月~2011年12月の2年間に採取された呼吸器感染症の乳幼児由来 1044 検体を対象に実施した結果、891 検体 (85.3%) から 1614 のウイルスを検出した。単独ウイルス検出は 505 検体、2種以上の複数ウイルス陽性は 386 検体に認められ、それぞれウイルス陽性検体全体の 56.7%、43.3%を占めたことから、呼吸器感染症については、単独のウイルス感染のみならず、複数のウイルスの関与を考慮する必要があると考えられた。個々のウイルスについては、国内における知見が少ないライノウイルスの遺伝グループCについて流行期を解析し、主に冬季を中心とした流行であること、遺伝グループA(春を中心に流行)とは異なる流行期であることを報告した。また、2010年夏を中心に起こったエンテロウイルス68型の流行を国内で初めて報告し、検出株のゲノム配列の解読、解析結果を報告した。一方、呼吸器感染症の成人男性から、日本国内初、世界で3報告目となるエンテロウイルス104型を検出し、全塩基配列を解読するとともに、分子疫学的手法を用いて解析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
呼吸器感染症におけるウイルス感染症については、流行解析、分子疫学解析が順調に進展し、成果報告へとつながっている。呼吸器ウイルス排出期間の検討についても、解析が予定どおり進捗している。他の実施予定項目(個体中でのウイルス共存の意義の解明、新興呼吸器ウイルス分離方法の構築等)は、順次、試みており、次年度を中心に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
呼吸器ウイルス感染症については、本年度同様、500検体ほどの検体採取が見込めるため、重点的に流行解析、分子疫学解析に取り組み、新知見の獲得をめざす。特にすでに多くの陽性検体が判明しているパラインフルエンザウイルス4型、アデノウイルス、コロナウイルス (NL63, OC43, 229E, HKU1)に焦点を当て、解析を進めることで効率的な研究の進展が見込まれる。 呼吸器ウイルス陰性検体における細菌遺伝子検索の結果、Mycoplasma pneumoniae の検出が散見される。近年、抗生物質への耐性化が進んでいるとされるため、検出されたMycoplasma pneumoniae については、薬剤耐性化についても検討を進める。 呼吸器感染症病原体共存の意義の解析については、ウイルス共検出例、ウイルスと細菌の共検出例があるが、まずウイルス共検出例に焦点を当て、解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1) マルチプレックス・リアルタイムPCR法を用いた呼吸器感染症病原体検出と流行解析 本年度採取見込みの約500検体について、平成23年度と同様に継続した検出と流行解析を実施する。特にパラインフルエンザウイルス4型、アデノウイルス、コロナウイルス(NL63, OC43, 229E, HKU1) に焦点をあて、分子疫学的解析を進める。2) 呼吸器ウイルス排出期間の検討 1歳女児から1年半にわたって継続採取した臨床検体中のウイルス遺伝子検索をおこない、ウイルス排出期間の検討をおこなう。3) ウイルス共検出例の生体内再現モデルの構築 同一検体における複数ウイルス陽性例について、ウイルス共存の意義の検討をおこなう。ウイルス共検出の原因としては、同一細胞中への複数ウイルスの同時感染、異なる呼吸器細胞への異種ウイルス感染、あるいは、既感染ウイルスの排出期間中における異種ウイルス感染の可能性が考えられる。そこで、リポソーム等の細胞へのタンパク質導入試薬を用いて、精製ウイルスを同一細胞内に物理的に導入すること、あるいはウイルスゲノムDNAを組み込んだ発現プラスミド、またはin vitro合成したウイルスゲノムRNAの細胞導入を試み、ウイルス共検出例の生体内再現モデルを構築し、解析をおこなう。導入・発現が確認された場合、単一ウイルス、あるいは複数ウイルス導入時について、細胞の炎症性サイトカイン産生能を1つの指標として、ELISA、あるいはリアルタイムPCR 法を用いて定量アッセイをおこない、炎症症状に与える影響を検討する。一方、ウイルスの経時的な定量を実施し、増殖変化に与える影響について検討をおこなう。
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Research Products
(9 results)