2011 Fiscal Year Research-status Report
アルコールに起因する心血管イベントに対する新たな指標としてのTRPチャネルの役割
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23790726
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
工藤 利彩 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20347545)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エタノール / TRPチャネル / 心血管イベント |
Research Abstract |
正常ラットから摘出し内皮細胞を剥離した腸間膜動脈および肝動脈を用いた血管弛緩実験において、カプサイシンおよびアナンダミドをagonistとしたTRPV1刺激による神経細胞依存性弛緩反応に及ぼす急性エタノール投与の影響を検討したところ、エタノールはいずれの血管においても両agonistにおける弛緩反応を有意に抑制した。また、腸間膜動脈において、TRPV4のagonistであるGSK1016790A刺激による弛緩反応の機序について検討したところ、内皮細胞を剥離することにより弛緩率が激減した。これはGSK1016790A刺激による弛緩反応が主に内皮細胞を介して行われている可能性を示唆している。エタノールはこのGSK1016790A刺激による弛緩反応も抑制する傾向を示している。これらのことから、エタノールは神経細胞依存性および内皮細胞依存性の両方向から弛緩反応を抑制し、心血管イベント発症の一因となっている可能性が考えられた。免疫組織化学法による大動脈・腸間膜動脈・肝動脈におけるTRPV1およびTRPV4発現の予備検討を行ったところ、大動脈および肝動脈はTRPV1、TRPV4ともに非常に発現が弱く、腸間膜動脈のmain branchではTRPV1は平滑筋細胞全体に、TRPV4は内皮細胞から平滑筋細胞全体に発現が見られた。今後はさらに末梢部位での発現を確認し、血管弛緩実験結果と合わせてTRPチャネルの役割について考察する予定である。ウェスタンブロット法を用い、大動脈におけるeNOS発現の予備的検討を行ったところ、弱い発現を認めた。今後は他の血管部位においても発現を確認しTRPチャネル反応系への関与について考察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
正常ラットの摘出血管を用いた弛緩実験についてはほぼ予定通りに進行しているが、細胞内カルシウムイオン濃度変化の測定、免疫染色、ウェスタンブロットについてはまだ予備的検討の段階であり、慢性アルコール投与ラットの実験についてはこれから進めていく予定であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、免疫組織化学法による大動脈・腸間膜動脈・肝動脈におけるTRPV1およびTRPV4発現の予備検討を行ったところ、いずれの血管においてもTRPV1、TRPV4ともに非常に発現が弱かったことから、今後は抗体の再検討や血管のさらに末梢部位での発現を確認し、血管弛緩実験結果と合わせてTRPチャネルの役割について考察する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に繰り越した110000円については、細胞内カルシウムイオン濃度測定のための蛍光プローブ代および、免疫染色のための抗体代として用いる予定である。
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