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2012 Fiscal Year Research-status Report

死後経過時間推定精度向上のためのヒト死体早期入植双翅目の入植時間帯に関する研究

Research Project

Project/Area Number 23790728
Research InstitutionIwate Medical University

Principal Investigator

三枝 聖  岩手医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30398490)

Keywords法昆虫学 / 法医学 / 死体現象 / 昆虫学 / 生態学
Research Abstract

法昆虫学的な死後経過時間の推定において最も重要視される事象は,死体発見時に死体を蚕食している昆虫の入植(産卵/産仔)であり,死体の「第一発見者」である第一入植種およびその入植時期の特定が,精度の高い死後経過時間推定につながる。これまでの法医解剖事例などから,死体から採集される昆虫として双翅目(ハエ目)が頻度・個体数とも最多であり,特にクロバエ科は死体発見現場がどのような環境であっても早期入植双翅目となり,死体の主要な蚕食分解者であることが明らかになってきた。申請者はこれまで各季節ごとにブタ屍をヒト死体の代替モデルとして屋外(大学敷地内)に留置し,昆虫の飛来・入植とブタ屍の腐敗分解過程を経時的に観察記録してきた。その結果,双翅目の入植は夜間には起こらないことを確認したが,日中であっても入植の起こりやすい時間帯が双翅目種によって異なるのではないかとの着想に至った。この仮説が正しければ,死体の第一入植種を特定することにより,精度の高い死後経過時間の推定が可能となる。そこで,ブタ肉片を誘引餌として屋外留置し定時的に観察を行った。観察の際に卵塊など入植が確認できた場合は,ブタ肉片を回収し研究室にて飼育するとともに,新たに肉片を留置することにより入植好発時間帯の把握を試みた。その結果,日中でも午前中に入植は起こらないこと,夏期ではホホグロオビキンバエ,秋期・春期など寒冷/温暖移行期ではオオクロバエなどが薄暮であっても雌成虫が産卵を行っている場合があることなどが明らかになった。一方で,ブタ肉片では双翅目の誘引力が弱く,ブタ屍留置の場合よりも第一入植までに時間を要すること,学内的事情から屋外実験場所の移動を余儀なくされ,過去に経験の無かった肉食動物(カラス・ネコ)による実験装置の破壊と,ブタ肉片の持ち去り等の不測の事態が起こるなど,実験を実施するにあたって解決すべき問題点も生じている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ブタ肉片を誘引餌とした双翅目入植確認実験は,これまでブタ屍屋外留置実験を行った場所(大学敷地内)に設置した簡易施設(視覚的遮蔽を行う構造物)を継続利用してきたが,敷地利用目的が変更になったことに伴い,屋外実験場所の移設を行わなければならなかった。また,ブタ屍に比し,肉片では双翅目の誘引力が弱く,ブタ屍留置の場合よりも第一入植までに時間を要することがままあり,効率的に誘引する工夫が必要となった。さらに移設した屋外実験場所では,肉食動物(カラス・ネコ)により実験装置の破壊され,ブタ肉片を持ち去られてしまうという物理的な攪乱が起こり,実験を中断し,対策を考慮せざるを得なくなった。

Strategy for Future Research Activity

ブタ屍留置実験は,腐敗分解過程および死体昆虫相遷移を観察することには適しているが,人為的な昆虫相の攪乱を避けるため,ブタ屍への接触は最低限に止め,体位変換および移動は行わず,かつ大型動物用ケージ内に留置していたので,第一入植以降の入植(産卵/産仔)は確認が難しいこと,死体の腐敗分解に伴って昆虫相の遷移が起こるため,早期入植双翅目昆虫の入植に好適な時期が限られることなどの欠点があった。これらの問題を解決し,早期入植種の把握と,各双翅目種の入植好発時間帯の確認のために,ブタ肉片を誘引餌として,屋外に留置し,卵塊など入植が確認された際に,肉片を回収し,新たな肉片と交換するという実験を実施してきた。また,昆虫種同定のために回収した肉片を飼料として卵塊を研究室にて飼育し,成虫を羽化させることを試みた。しかしながら,ブタ屍個体に比して肉片では誘引力が弱く,第一入植までに時間を要する場合が多いこと,ブタ肉片をネコ・カラスなどの肉食動物に奪われるなど,過去に経験の無い不測の事態が生じたことなど,解決すべき問題点が顕在化した。腐敗臭気は双翅目成虫を誘引する要因として有効であることは明白なので,誘引力が貧弱で,入植の頻度が低い場合などに,ブタ屍留置を並行して実施し,双翅目成虫の効率的な誘引を図る。また,ネコ・カラス等の対策として,誘引餌として用意するブタ肉片も死体を蚕食する昆虫のみが接触可能になるように,装置の補強などの工夫・改善を施し,実験を実施する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

採集した昆虫の概観が同一観察視野(撮影枠)内に収まるように撮影するためには,当初購入した対物レンズでは倍率が高すぎる場合がままあるため,低倍率対物レンズおよび補助スリーブを追加購入。また,カップステージなど,観察・撮影をより円滑に行うための実体顕微鏡用部品の購入。ブタ肉片留置による早期入植昆虫確認実験で生じた不測の事態への対応と改善,特にカラス・ネコ等大型動物によるトラップの損壊や昆虫誘引用肉片の持ち去りに関して予防措置が必要となったために,装置作製・改良用各種器具・消耗品,誘引餌(ブタ肉)・飼育容器などの消耗品の購入。捕虫網などの昆虫採集用品,エタノール・酢酸エチルなどの昆虫標本作製用試薬,昆虫針・標本箱などの昆虫標本作製用消耗品,核酸抽出キット・塩基配列解析用試薬,各容量マイクロチューブ,ピペットチップなど,昆虫の分子生物学的解析用試薬・消耗品の購入。その他デジタルカメラにて撮影した画像保存用メディア,スピードライト・温湿度データロガなどに使用する充電池などの消耗品の購入。以上のように,主として研究推進上の障害を改善するための消耗品および研究遂行に必要な試薬・消耗品の購入に充てる。

Research Products

(4 results)

All 2013 2012 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 早期入植双翅目昆虫の越冬様式と冬期を経たブタ屍の死後変化過程2012

    • Author(s)
      三枝聖,松政正俊,三上修,藤田さちこ,高宮正隆,出羽厚二,青木康博
    • Journal Title

      法医学の実際と研究

      Volume: 55 Pages: 183-187

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 岩手県内陸部ヒト生活圏の晩秋・初冬期における早期入植双翅目の活動と入植条件2013

    • Author(s)
      三枝 聖,松政正俊,三上 修,藤田さちこ,高宮正隆,出羽厚二,青木康博
    • Organizer
      第97次日本法医学会学術全国集会
    • Place of Presentation
      札幌市
    • Year and Date
      20130627-20130627
  • [Presentation] 早期入植双翅目昆虫の越冬様式と冬期を経たブタ屍の死後変化過程2012

    • Author(s)
      三枝 聖,松政正俊,三上 修,藤田さちこ,高宮正隆,出羽厚二,青木康博
    • Organizer
      第96次日本法医学会学術全国集会
    • Place of Presentation
      浜松市
    • Year and Date
      20120609-20120609
  • [Remarks] 法昆虫学のぺーじ

    • URL

      http://www.forensicentomology.jp/

URL: 

Published: 2014-07-24  

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