2013 Fiscal Year Annual Research Report
死後経過時間推定精度向上のためのヒト死体早期入植双翅目の入植時間帯に関する研究
Project/Area Number |
23790728
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
三枝 聖 岩手医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30398490)
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Keywords | 法昆虫学 / 双翅目 / 入植 / ニクバエ科 |
Research Abstract |
岩手県のように積雪があり,昆虫の活動がみられない地域において,寒暖境界期,特に春期に発見された陳旧死体が昆虫の蚕食を受けている場合,昆虫の入植(産卵・産仔,採餌のための定住)および死後経過時間推定に苦慮することがままある。これまでの研究では寒暖境界期に主眼を置き,ブタ屍の死後経過ならびに死体昆虫相について調査した。晩秋期にはみられない腐敗ガスにより膨隆したブタ屍に誘引される死体昆虫相への影響について観察してきた。しかし,一般的に昆虫の活動が活発であり,法昆虫学による死後経過時間推定を適用する好適期と考えられる盛夏に,昆虫の入植に対する障壁が想定され難い状態であっても,種数・個体数とも少ない事例を経験することがある。ニクバエは卵胎生であり,かつ,多くの場合,早期入植クロバエ科と混在してみられることから,本科双翅目が第一入植種であることが明確である事例は少ない。そこで,盛夏の第一入植種を把握するため,2013年8月初旬から9月末の52日間,屋外にブタ肉片を留置し,定時的に観察する実験を行った。入植のみられた肉片は研究室にて飼育し,羽化した雄成虫の生殖器形態を指標として,昆虫種の同定を試みた。実験期間中,クロバエ科成虫の飛来を確認したのは2回のみであり,クロバエ科と思料される卵塊は9月末に1回のみ採集された。しかし,この卵塊は孵化せず,種の同定に至らなかった。また,夜間の入植は確認されなかった。センチニクバエやナミニクバエなど,ニクバエ類の産仔がみられた機会は29回あった。これらの観察結果から,盛夏に早期入植するクロバエ科の活動が低下する時期があること,およびこのような時期にはニクバエ科が第一入植種となる可能性が高いことが示唆された。
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Research Products
(2 results)