2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790729
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
稲岡 斉彦 東海大学, 医学部, 助教 (50564689)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | SIDS / ニコチン / 細胞内応答 |
Research Abstract |
乳幼児突然死症候群(SIDS)について様々な国で疫学調査が実施されているが、どの調査でも親側のリスクファクターとして挙げられるのが喫煙であり、我々は突然死にニコチンが影響していることを想定している。平成23年度の研究では、ニコチンを作用させた副腎髄質クロム親和細胞、および肝細胞における遺伝子発現変化をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した。現在、これら細胞において変動のあった遺伝子について、経時変化および、ニコチン濃度変化における変動の違いを確認している。また、変動の確認された遺伝子群のなかには、シグナル伝達に関わる遺伝子や機能の解明されていない遺伝子も含まれていた。このことから、ニコチン作用により、細胞内で引きおこされるシグナル経路の解明や、新規遺伝子の機能解明をおこなっている。また、肝臓でのニコチン代謝を行うCYP2A6には多型が報告されており、特に4型はCYP2A6完全欠損であることが知られている。現在、SIDS検体集団と、コントロール検体集団でのCYP2A6の多型の関連解析をおこなっている。さらにSIDS検体においては、ニコチン受容体、低酸素応答に関わる遺伝子についてDNAシーケンスを行った。現在は低酸素応答因子によって制御されるとの報告のあるP450 oxidoreductaseについて、新規の非同義置換である、G537Sを確認した。SIDSに対する遺伝的背景の研究は国内外問わず盛んであり、遺伝的背景から原因を解明することは、法医分野での診断において重要な役割をもつと考えられる。乳幼児の突然死は家族にとって悲劇的なものであり、また社会的損失も大きいと考えられる。一方で、乳幼児に限らず、成人の虚血性心疾患を含めた突然死においても、喫煙は重要なリスクファクターであることから、細胞内応答を含めた病態の解明および診断法の確立による社会的貢献は大きいものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAマイクロアレイによるニコチンで変動のある遺伝子の確認、SIDS検体における、変異検出や多型解析等交付申請書に記載した内容の実験計画について、ほぼ予定通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAマイクロアレイにより網羅的に解析した遺伝子群についての変動を詳細に確認した後、これら遺伝子について、SIDS検体での変異および多型解析を進めていく予定である。また、アミノ酸置換の生じた変異が認められたものについては、発現ベクターを作製し、その活性を確認する予定である。また、機能が不明な遺伝子については、転写制御についての解明も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SIDS検体において変異の確認されたアミノ酸置換体発現ベクターを作成するための試薬や細胞培養用の培地やPCR試薬の購入にあてる予定である。また転写調節領域での活性を調べるためのルシフェラーゼアッセイ系の試薬およびルミノメーターを購入する予定である。
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