2011 Fiscal Year Research-status Report
香蘇散の抗うつ様作用メカニズムにおけるオレキシン神経系制御の役割
Project/Area Number |
23790751
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 直樹 北里大学, 東洋医学総合研究所, 研究員 (00370164)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 香蘇散 / 抗うつ様作用メカニズム / オレキシン |
Research Abstract |
これまでに我々は、漢方方剤「香蘇散」の抗うつ様効果に脳内オレキシン(OX-A)およびニューロペプチドY(NPY)神経系の制御が深く関与していることを明らかとしたが、香蘇散がそれらの神経系をどのように制御しているのかについての詳細は未だ不明である。そこで、これまでの動物実験により得られた結果を踏まえて、23年度では培養細胞を用いて、(1) OX-Aの受容体であるOXR1の発現量に及ぼす香蘇散の影響、並びに (2) OXR1に対する香蘇散中成分の結合活性について検討した。以下にその結果を示す。 (1)では、ラット胎児脳由来初代培養細胞を用いて検討を行った。始めにこの細胞でOXR1の発現が認められることを確認した後、香蘇散投与ラットから採取された脳脊髄液の添加によるその発現量をwestern blotにより調べたところ、香蘇散添加ではOXR1発現量挙動に影響を与えなかった。 (2)では、OXR1を高発現させた株化細胞 (OXR1-HEK293 cell) を用いてレポータージーンアッセイによる検討を行った。その結果、香蘇散添加による結合活性は認められなかった。これは則ち、香蘇散中にOXR1のリガンドとなるような成分は含有されていなかったことを示唆する。 一方、次年度実施予定の研究の予備検討において、OX-A添加によりラット胎児脳由来初代培養細胞からNPY産生が促進される結果が得られた。この結果は、これまで明らかとなっていなかったOX-AによるNPY調節機構の可能性を示唆するものであり、また香蘇散の抗うつ様効果に関与する脳内OX-A神経系とNPY神経系を繋ぐ制御機構として、大変重要な知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた研究ではポジティブな結果は得られなかったが、予備検討において次年度の研究に繋げられるポジティブな結果が得られたので、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られたOX-AによるNPY調節機構の結果をもとに、次年度ではその詳細なメカニズム解明を中心に検討を行う。そしてその実験系に、香蘇散および香蘇散投与ラットから採取された脳脊髄液を作用させた時に、ラット胎児脳由来初代培養細胞からNPY産生が促進されるかどうかの検討を行う。さらに、OX-Aにより誘導されたNPY産生が、香蘇散又は香蘇散投与ラットから採取された脳脊髄液添加によって相乗・相加的に亢進されるかどうかの検討も併せて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の前倒し請求により、次年度の使用予定額に変更があったが、旅費およびその他の経費を物品費に当てることで対処できる。よって、本研究課題を遂行する上で問題は無い。
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