2011 Fiscal Year Research-status Report
核内受容体活性化を基盤とした漢方方剤における厚朴配合の意義の解明
Project/Area Number |
23790754
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
小谷 仁司 愛知学院大学, 薬学部, 助教 (10594640)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 核内受容体 / 東洋医学 / 厚朴 / RXR / 漢方方剤 / honokiol / メタボリックシンドローム / 動脈硬化 |
Research Abstract |
平成23年度は、in vitroにおけるhonokiolによる核内受容体アゴニストとの増強作用の解析を中心に研究を行ってきた。具体的には、メタボリックシンドロームに関わる核内受容体として、PPARガンマおよびPPARデルタのアゴニストとhonokiolを共存させた際における標的遺伝子発現の誘導作用の変化について調べた。その結果、脂肪細胞において脂肪細胞の分化誘導を促進するとともに、標的遺伝子であるaP2,C/EBPalpha,GLUT4,adiponectinなどの発現誘導を増強する作用をhonokiolが持つ結果が得られた。また、骨格筋細胞においては熱産生などに関わる遺伝子であるUCP-2の遺伝子発現誘導を増強する結果も得られた。これらの結果より、脂肪組織や骨格筋においてadiponectinを産生したり、糖の取り込みや熱産生を活性化することにより、メタボリックシンドロームに有効性が期待される。また、これまでにスクリーニングを行ってきた生薬エキスの数を60種類ほど増やしたところ、厚朴と同様にRXRアゴニスト活性を示す生薬エキスを見出し、アゴニスト成分を同定した(特許申請予定)。合成RXRアゴニストとhonokiolなどのヘテロダイマー活性化の選択性を評価するため、脂肪細胞および骨格筋細胞において、LXR,PPARガンマ,PPARデルタのアゴニストと共存させた際の標的遺伝子発現の誘導作用を網羅的に見るため、200~300程度の遺伝子発現が解析できる生活習慣病マイクロアレイで解析を行った。その結果、合成アゴニストbexaroteneではLXRとのヘテロダイマー活性化が強く、honokiolではPPARとのヘテロダイマーのほうが活性化作用が強い傾向が見られた。In vivo実験に関しては、honokiolの短期経口投与を試みたがあまり大きな遺伝子発現変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
In vivoにおける検討において、標的遺伝子発現の変化がhonokiol単独ではほとんど見られなかった。そのため、ヘテロダイマーパートナーとなるLXR,PPARなどのアゴニストとの同時投与を試みる必要があると考えられる。また、同時投与を行うにあたり相乗作用を検討したいので、それぞれの薬剤単独では大きな作用が見られない程度の投与量を設定する必要があり、投与量に関して入念な検討が必要である。また、平成23年度の研究において予想外に厚朴と同じくRXRアゴニスト活性を示す生薬エキスが一つ出てきたことから、厚朴と比較しつつ効果を検討するべきであると考え、そちらの成分におけるこれまでhonokiolで行ってきたのと同様なin vitroの解析を優先したため、in vivo実験が遅れてきている。in vivoにおける厚朴の効果を検討する前段階として、活性成分となるhonokiolの効果が検出することができることが必要であると考えられるため、厚朴が配合される漢方方剤4種類について熱水抽出を行い、honokiolの含有量を調べ、honokiolでのin vivoでの効果と比較する必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度より研究室の異動があり、これまでのメタボリックシンドロームに関わるような動物モデルの利用が難しくなった。しかし、逆に免疫関連の動物モデルに関しては充実していることから、免疫系に対する核内受容体を介した厚朴の配合の意義について解析をおこなっていくことに計画を変更していくつもりである。この変更に対して、核内受容体のRARはT細胞の分化誘導に影響を与えていることも知られており、腸管免疫などにも関わっていることから、充分対応して行くことができると考えられる。また、動物モデルもコラーゲン誘発性関節炎モデルマウス、EAEモデルマウス、大腸炎モデルマウス、食物アレルギーモデルマウスなど様々なものがあるとともに、成分の吸収や血中濃度などを考える必要があまりないと思われる腸管免疫系のモデルが数多く存在することも、現在の遅れを取り戻すのに都合が良いと考えられる。また、honokiolの自己免疫疾患に対する効果を示す論文もいくつか報告があり、その機序は様々であるが、実際には核内受容体RXRのヘテロダイマー活性化を介した作用である可能性も高く、詳細な検討を行うとともに、厚朴の効果も検討する必要があると考えられる。最終的には、他の核内受容体を活性化する生薬との組み合わせでの効果を検討し、漢方方剤における厚朴の配合意義について解明していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は最終年度になるので、研究のまとめを行っていく必要がある。したがって、学会参加や論文報告のための研究費使用が多くなってくると考えられる。また、遺伝子発現やFACSにおける解析などに分子生物学の試薬や抗体などが新たに必要になると考えられる。特に、自己免疫疾患に対する効果を検討するにあたっては、T細胞の分化に及ぼす影響を詳細に解析する必要があり、その際にはT細胞の表面マーカーを蛍光ラベルした抗体を一通り揃える必要があり、これまで揃えた試薬だけでは対応できない部分も多く出てくると考えられる。このようなことから、平成24年度の研究費の使用計画としては、分子生物学試薬や抗体などの購入、学会発表などの旅費や論文作製のための経費が多くを占めると考えられる。
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