2011 Fiscal Year Research-status Report
腸肝軸におけるTLRシグナル乖離と腸内細菌の変化がもたらすNAFLD病態の解析
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23790758
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
澤田 康司 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (80548660)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | NAFLD / TLRシグナル / 脂肪酸 |
Research Abstract |
コンベンショナル環境下飼育の高脂肪食負荷マウスでは4週では脂肪肝は形成せず、16週間を要したが、腸肝軸におけるTLRの発現はreal time PCRの検討で乖離しており、その下流のエフェクター分子であるTNF, IL-1βの発現も乖離している事を確認した(肝組織では、TLR2, TLR4, TLR5, TLR9, TNF, IL-1βの発現が亢進し、腸管組織では低下していた)。さらにTLR signal のkey mediatorであるpIRAK1の発現もwestern blotにて肝では亢進、腸管では低下している事を確認した。この事は、肝組織においてはTLRシグナルが亢進し、腸管組織においてはTLRシグナルが低下している事を示唆している。 TLRシグナル乖離のメカニズム解析のために、まず脂肪酸負荷培養細胞の実験を行った。肝細胞モデルとしてHuh7、 Kupffer細胞モデルとしてTHP-1、腸管上皮モデルとしてCaco2にオレイン酸を添加しTLRの発現、TNF, IL-1βの発現をreal time PCR法で検討した。オレイン酸添加で、Huh7におけるTLR5, THP-1におけるTLR2, TLR4, TLR5の発現亢進とCaco2におけるTLR2, TLR5の発現低下を認めた。更にTNF, IL-1βも同様にTHP-1で亢進、Caco2で低下していた。またpIRAK1はwestern blotでTHP-1において亢進、Caco2において低下していた。これらの結果はin vitroと類似しており、脂肪酸が腸肝軸のTLRシグナルを変化・発現乖離させている事が示唆された。しかし、初代肝細胞へのオレイン酸添加ではTLRの発現亢進は認めなかった(研究目的(2))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脂肪肝形成まで当初4週間の高脂肪食投与を予定としていたが、4週では脂肪肝は形成せず、腸肝軸でのTLRシグナルに発現変化は認めなかった。8週投与で、わずかに肝組織に脂肪滴が沈着し、16週間投与することで脂肪肝の形成と腸肝軸におけるTLRシグナルは発現乖離を認めた。さらに脂肪酸負荷培養細胞の実験結果から、腸肝軸におけるTLRシグナルの発現乖離のメカニズムの一因として脂肪酸が関与している可能性が示唆された。よって本研究目的(2)は概ね達成されたが、高脂肪食負荷の期間が大幅に延長されたため23年度の研究目的(1)は達成されていず本研究はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果より腸肝軸のTLRシグナル変化は脂肪酸の関与が示唆されたが、本年度は脂肪肝形成と腸内フローラの関与を中心に検討していく。(1)高脂肪食16週間負荷NAFLDモデルマウスの腸内フローラの解析を行い、NAFLD病態進展細菌の同定を行う。(2)SPF環境下飼育マウスに高脂肪食16週間投与し、脂肪肝の形成、腸肝軸TLRシグナルの解析、腸内フローラの解析を行う。(3)SPF環境下通常食マウスに(1)で同定した細菌を投与し、脂肪肝形成の有無、腸肝軸TLRシグナルの変化を検討する。これらの検討により、腸内細菌と脂肪肝の形成、腸肝軸TLRシグナルの関与が明らかになると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品はすでに当研究室に現有しているため、研究費のほとんどは消耗品に使用される。また、成果発表、論文掲載料としても使用予定である。
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Research Products
(8 results)