2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23790769
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
藤村 理紗 千葉大学, バイオメディカル研究センター, 助教 (30376363)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 腸管神経 / 一酸化窒素 / Ncx-KOマウス / 腸内フローラ / 腸管バリア |
Research Abstract |
腸管では、免疫・内分泌・神経系が相互作用により恒常性を維持しているが、神経系の役割については不明である。当研究では、腸管神経系の役割の解明を目的とし、その一部を明らかとした。腸管神経過剰であるNcx-KOマウスは、DSS誘導腸炎モデルにおいて非常に高い感受性を示した(高い死亡率と激しい体重減少、腸管組織における炎症性サイトカインの高産生、激しい細胞浸潤)。また、DSS投与後高い確率で血便を呈したことから、腸管バリアの破たんが予想された。腸管バリアを形成する腸管上皮細胞において、Ncx-KOマウスでは細胞間接着タンパクであるe-cadherinの発現が減少し、上皮の透過性が亢進した。一方で、一酸化窒素合成阻害薬(NOS)を投与すると、上皮e-cadherinの発現は改善した。また、DSS投与とともに抗生物質を投与したところ改善した。以上から、Ncx-KOマウスでは、神経過剰による一酸化窒素(NO)の過剰から上皮e-cadherinの発現が低下し、細菌の侵入を容易にしていることが示唆された。ところが、NOS投与によって、症状は改善しなかったため、腸管神経由来NOによる守護的な役割があると考えられた。マクロファージ由来NO同様、腸管神経由来NOも、殺菌作用や、腸内環境を維持する役割を持つことが考えられた。そこで、腸内フローラについて調べたところ、Ncx-KOマウスでは、好気条件で生育する菌が野生型と比べ10~100倍増えており、腸内細菌科の菌数が増加していた。以上より、Ncx-KOマウスでは腸内フローラのバランス異常を認めた。以上の結果より、腸管神経は、腸管恒常性の維持と炎症性腸疾患において何らかの関わりを持つことが明らかとなった。当研究の研究成果は、腸管神経の役割を解明することは、ヒトの炎症性腸疾患における病態のコントロールおよび治療において将来的に有用である可能性を示した。
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