2011 Fiscal Year Research-status Report
新しい低侵襲治療「非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術」に関する基礎実験
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23790770
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
後藤 修 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (00589658)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 胃癌 / 胃粘膜下腫瘍 / 低侵襲 / 内視鏡 / 腹腔鏡 / 手術 / 局所切除 / センチネルリンパ節 |
Research Abstract |
本研究は、ブタを用いた動物実験系において、癌を含めた胃腫瘍に対する新しい局所切除法としての非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術の実現可能性および安全性を検証し、「管腔を穿孔させない胃壁全層切除」の臨床応用を実現させることを目的とした研究である。平成23年度の実験計画として(1)ブタ切除胃を用いた本術式における腹腔鏡操作に関する検証および(2)生体ブタを用いた急性実験を当初の計画として挙げた。(1)においては、内視鏡および腹腔鏡トレーニングキットを机上で組み合わせて本術式を施行、切除胃6個全てにおいて手技の完遂が可能であった。結果を国内および国際学会で発表した。(2)においては、(1)の結果を踏まえ、施設附置倫理委員会の承認を得た後、生体ブタ3頭に対し本術式を施行、全例で偶発症なく手技を完遂しえた。結果を国内および国際学会で発表した。さらに(1)、(2)の結果を英文誌に投稿した(査読中)。 実験が順調に推移しており、予算に余裕があったことから、当初平成24年度に計画していた(3)生体ブタを用いた慢性実験を前倒しして施行することが可能であった。(3)においては、施設附置倫理委員会の承認を得た後、生体ブタ3頭に対し本術式を施行、全例で偶発症なく手技を完遂しえた。観察期間として1週間飼育し、術後経過が良好であることを確認した。結果を国内および国際学会で発表予定である。 一連の研究により、本術式が技術的に実行可能であること、また短期的には安全な手技であることを確認できたことから、本研究代表者の勤務していた東京大学医学部附属病院において、倫理委員会の承認を得た後臨床導入へと至った。今後は、長期予後に関する安全性の確認と胃癌に対する本術式の適応拡大を目的として、観察期間を1か月とした慢性実験、および本術式と胃センチネルリンパ節理論を組み合わせた新しい低侵襲局所切除術の検討を行うとともに、慎重に臨床症例を蓄積していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度にはブタ切除胃を用いた机上実験及び生体ブタを用いた急性実験を計画していたが、研究が順調に推移していたこと、また経費を可能な限り節減したことなどにより、年度内に慢性実験(観察期間1週間)まで遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はまず生体ブタを用いて観察期間を1か月に延長した慢性実験を施行する。その後、胃癌手術における理想的な局所切除法の確立を目的として本手技に胃センチネルリンパ節理論を導入する。すなわち、最小限の胃癌局所切除法である本手技と、同じく最小限のリンパ節廓清を可能とする胃センチネルリンパ節理論を組み合わせることで、過不足のない切除範囲で胃癌の根治切除が得られることを目的とした実験を施行する。具体的には、生体ブタを用いて仮想病変を本手技にて局所切除すると同時に、上記理論に基づいた最小範囲のリンパ節を廓清する手術を施行し、残胃の壊死、創感染、腹膜炎などの術後合併症の有無をしかるべき観察期間で検証する。 本研究代表者は平成23年8月より、胃センチネルリンパ節理論を精力的に研究している一般・消化器外科を有する慶應義塾大学に異動し、彼らとともに本研究を継続している。また、所属している腫瘍センターは棟地下に専用の動物実験施設を有しており、慢性実験を含めた動物実験が容易に行える環境にある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は動物実験が主体であるため、次年度においても使用する施設に要する費用、動物および手術器具の購入費用に最も多くの経費がかかると考える。具体的には、動物実験施設使用料(病理検体作成費を含む)、ブタ購入・飼育費、手術器具・薬品など実験用消耗品として1,440,000円を計上した。 また、研究成果を発信する手段として内視鏡および腹腔鏡画像(動画を含む)の記録が必須であるため、設備備品費として必要最低限のデータ記録装置購入費200,000円を計上した。 旅費に関して、研究成果を発信する手段としての学会参加費用に必要な最低限の費用(200,000円)を計上した。また実験の性質上研究協力者が必須であるため、実験補助員に対する謝金として120,000円を計上した。 その他の費用として、論文作成時に必要なシェーマ作成費を40,000円計上した。
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