2011 Fiscal Year Research-status Report
腸炎疾患におけるカハール介在細胞の可塑性を制御する分子機構と組織幹細胞
Project/Area Number |
23790782
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
堀口 和秀 福井大学, 医学部, 講師 (20377451)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カハール介在細胞(ICC) / 腸炎 / 消化管運動 / c-KIT / マイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究は消化管運動のペースメーカー、あるいは神経筋伝達の介在の役割を担うカハール介在細胞(ICC)の、腸運動障害を伴う腸炎疾患時における障害と再構築に関わる分子メカニズムの解明を目指すものである。その目的のため、腸炎疾患モデル動物の病態時におけるICCが発現する分子を解析する。具体的には腸炎疾患モデル動物の病変腸管の筋層より受容体型チロシンキナーゼc-KITをマーカーとしてセルソーターを用いてICCを単離し、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション法およびマイクロアレイにより遺伝子解析を行うのが初年度の主たる実験予定であった。 まずトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBs)投与による腸炎モデルマウス作成を行った。その結果投与2日目の病変部結腸において、顕著なc-KIT発現細胞の減少が確認された。また、投与7日目にはc-KIT発現細胞の回復が見られた。そこでTNBs投与2日目に残存しているc-KIT発現細胞と、回復期にあると考えられる投与5日目のc-KIT発現細胞に発現する分子を解析するため、それぞれの時期におけるc-KIT発現細胞の単離を開始した。 しかし年度の途中において、申請者の所属する研究室にc-KIT遺伝子に緑色蛍光タンパクGFP遺伝子を挿入した遺伝子改変マウス(KIT-GFPマウス)が導入された。このマウスはICCがGFPでラベルされており、同細胞の同定や単離に非常に有力なツールである。本研究の遂行においてもこのマウスの使用が極めて有効であろうと判断されたため、当初の実験計画を変更し、KIT-GFPマウスを用いて上述の実験を行った。その結果、このKIT-GFPマウスにおいてもTNBs投与による炎症の発生と筋層におけるc-KIT発現細胞の減少が認められた。そこで、TNBs投与2日目、5日目のKIT-GFPマウス病変部結腸よりKIT発現細胞の単離を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TNBs投与マウス結腸よりc-KIT発現細胞を単離し、そこから得られたmRNAからcDNAを合成後、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション法およびマイクロアレイ法による網羅的遺伝子解析を行うのが本研究の初年度の主たる予定であった。年度の途中までサンプリングは順調に進んでいたが、上述の通り、新たに所属研究室に導入された遺伝子改変マウスを用いることで、c-KIT発現細胞のより効果的な同定・単離が可能になることが期待されたため、当初の計画を変更してKIT-GFPマウスを用いた実験系を組み立てた。 遺伝子解析まで到達することが初年度の予定であったが、上述の実験計画の変更によりサンプリングが全て終わらず、新年度に若干持ち越しとなった。しかしこの予定の変更によって、当初の予定よりもさらに正確なデータが得られることが期待される。 上述の事由のため、当初の予定からは若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目においては、初年度に終了しなかったサンプリングを早急に終わらせ、なるべく早い時期(一・二ヶ月程度)で網羅的遺伝子解析を行いたい。その結果を基に、二年目は主として以下の二点の研究を実施する。 1. 網羅的遺伝子解析より得られたICCの障害・再構築に関わる候補遺伝子の発現解析:網羅的遺伝子解析実験によって同定された遺伝子群が実際にICCに発現しているか、免疫染色法あるいはin situ hybridization法にて検定する。同時に、発現量の動態について定量PCR法により解析する。 2. 腸炎疾患および回復期におけるICCの障害・再構築に関わる候補遺伝子の機能解析:候補遺伝子のうち、ICCの障害・再構築に関与する可能性が高いものについて解析を行う。具体的にはアンタゴニストを用いた機能阻害実験や候補遺伝子のsiRNAを用いたノックダウンなどの遺伝子阻害実験を行い、当該遺伝子の役割について、特にICCの再構築に対する役割に重点を置いて検討を行う。候補遺伝子の機能については、炎症度に与える影響(組織像や化学誘引物質発現量など)や、生理学手法を用いてペースメーカー機能や神経刺激への応答の変化を計測し評価を行う。 また本課題のもう一つの柱である、「ICC幹細胞」の探索と炎症との関係についての研究も並行して実施する。Lorinczらの報告によれば、成熟ICCがKIT+CD44+CD34-Insr-Igf1r-という分子発現を示すのに対し、ICC幹細胞としての可能性が考えられている"ICC progenitor"はKITlowCD44+CD34+Insr+Igf1r+という分子プロファイルを示す。このことを指標に、炎症時および回復期にICC幹細胞が存在するか、ICCとの比率はどの程度であるか、セルソーターにより両細胞群を分離解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の通り、初年度の研究計画の変更に伴い、DNAマイクロアレイ解析費(外注:約400,000円)を二年目に繰越したい。 その他、試薬・消耗品・実験動物や、成果発表のための旅費、外国語論文の校閲費、論文投稿料等に使用を予定している。
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Research Products
(3 results)