2011 Fiscal Year Research-status Report
トリプトファンによる肝脂肪化・脂肪肝炎発症のメカニズムに関する研究
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23790787
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大澤 陽介 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60447787)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / トリプトファン / セロトニン / mTOR |
Research Abstract |
非アルコール性肝脂肪化は食事の欧米化、特に動物性脂肪の摂取により増加しているが、同時に摂取される動物性アミノ酸の肝脂肪化に与える影響についての研究は少ない。そこで動物性タンパク質に多く含まれるトリプトファンの肝脂肪化における影響を検討した。マウスに高脂肪食およびフルクトース含有水を与えて肝脂肪化を誘導した。このマウスにトリプトファンを同時摂取させ肝組織中性脂肪量、血清ALT値、線維化(collagen mRNA, Sirius red)、活性酸素産生(HNE染色)、mTOR活性、AKT活性、AMPK活性に対する影響を検討した。次に、トリプトファンのどの代謝経路あるいはどの代謝産物が肝脂肪化に影響するかを検討するため、トリプトファン代謝にかかわるIndoleamine 2,3-deoxygenase (IDO)およびAromatic amino acid decatoxylase (AADC)を肝臓に強制発現し、同様の検討を行った。脂肪肝モデルにトリプトファンを併せて投与したマウスでは、対照群と比べ肝脂肪化は増悪し、血清ALT値上昇、HNE発現増加、肝線維化の増加が認められた。トリプトファン投与により、肝組織中のmTORのリン酸化は増加したが、AKTおよびAMPKには影響がなかった。IDOおよびAADCの過剰発現は、それぞれの代謝産物であるキヌレニンおよびセロトニンの血中濃度を上昇させたが、肝脂肪化の増悪効果はAADCの過剰発現にのみ認められた。培養肝細胞の脂肪酸添加による中性脂肪蓄積は、セロトニン存在下で増加した。また、セロトニン添加によりmTOR活性化が認められた。セロトニン投与によるmTOR活性化および中性脂肪増加は、mTOR阻害剤であるラパマイシンにより抑制された。以上より、トリプトファンによる肝脂肪化はセロトニンによるmTOR活性増加を介していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリプトファンは脂肪肝の増悪因子であり、そのメカニズムの1つとしてセロトニン産生を介したmTORの関与を明らかにできた。この研究結果の一部は次年度計画していたものであり、全体として研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた達成度よりも早く研究結果が得られており、次年度は研究の完結と、さらに発癌やオートファジーとの関連まで深く進展させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物30万円、特殊飼料10万円、生化学分析・免疫染色(抗体)・遺伝子発現用試薬60万円、分析料(外注)10万円、学会発表・他施設との研究打ち合わせ20万円、その他(論文査読・掲載料など20万円。
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Research Products
(8 results)