2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790798
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
塩田 星児 大分大学, 医学部, 助教 (00420646)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Helicobacter pylori / dupA |
Research Abstract |
まずdupA遺伝子のタイピングを行った。dupA遺伝子の有無を確認するため2,500bpのlong dupA、ならびに1,800bpのshort dupAを認識するプライマーを作製しPCRで検出を行った。次にdupA遺伝子陽性例については、dupA配列が現時点で最も長いShi470の配列をもとにシークエンスプライマーを設計し、DNAシークエンスを行うことでdupAの全長の解明を行った。その結果、long dupAを有する割合は胃潰瘍、十二指腸潰瘍で有意に胃炎群より高かった。 dupA下流のvir類似因子(virB8、virB9、virB10、virB11、virD4、virD2)の6つの遺伝子に対し設計したプライマーを使用し、PCRでそれらの遺伝子の有無を確認しtfs3のタイピングを行った。その結果、すべてのvir遺伝子を有している割合は胃炎群よりも十二指腸潰瘍群で有意に高かった。 これらの結果から、dupA陽性の中でもlong dupAが重要であること、さらにその周辺のvir遺伝子群をすべて有し完全型clusterを形成しているものがIV型分泌装置を形成し、病原性に関係していると考えられる。 これらのタイプと組織学的胃炎についても現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に目的としたdupAのタイプの確認、tfsのタイプの確認、さらにはそのタイプと疾患の関係の検討も順調に遂行できている。完全型clusterの形成と疾患の関係については英文論文に掲載され、dupAのタイプと疾患の関係についても米国の学会で発表を行った。 これらの成果より、本研究も目的の達成度は高いと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は臨床分離ピロリ菌を用いた培養細胞への感染実験を行う。dupAおよびvir類似因子によるタイピングが可能であることを平成23年度は示したが、このタイプの生物学的機能解析を行うために、それぞれのタイプのdupA、tfs3を持つピロリ菌を培養細胞に感染させ、培養上清中のサイトカイン濃度測定および生着率の観察を行う。dupA、tfs3のタイプの違いによるサイトカイン産生能の解析では、胃上皮細胞株として、AGS細胞およびMKN45細胞を用いる。単球はヒト末梢血単球細胞を用いる。それぞれのdupA、tfs3のタイプを有するピロリ菌を培養細胞に感染させ、感染後6時間、12時間、24時間における培養上清中のIL-8、IL-12等のサイトカイン濃度をELISA法を用いて検討する。また、培養細胞への生着率の解析も行う。それぞれのタイプのdupA、tfs3をもつピロリ菌をAGS細胞およびMKN45細胞に感染させ、洗浄にて遊離のピロリ菌を除去した後、抗H. pylori抗体にて認識させる。その後蛍光標識した2次抗体で発色させることで細胞に生着した菌の量を数値化することが可能である。 もうひとつの課題は抗DupA抗体を用いたDupA蛋白の大きさの検討である。dupAには長さの異なるタイプが存在するため、DupA蛋白のサイズを調べるためにはウェスタンブロットを行う必要がある。合成ペプチドをウサギに接種するとウサギ血清中で抗DupA抗体が上昇することが確認できている。この抗体を使用することでDupA蛋白の有無および大きさの検討も可能となる。dupA遺伝子のタイプとDupA蛋白の関係を比べることで、抗DupAペプチド抗体の精度が推測され、さらにDupA蛋白のサイズの測定も可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度には新たにマイクロプレート吸光度リーダー(Bio-Rad, 168-1002E)を購入したい。消耗品費として、IL-8、IL-12等のサイトカイン濃度測定ELISAキット、PCR用酵素、プライマー合成、培養細胞用の培地、血清を計上している。成果報告としての学会発表(東京2泊3日、2回)は、学内旅費規程に基づいた概算額を計上した。菌の培養や培養細胞の培養について、現状では時間の制約上困難であるため、実験補助員に手伝ってもらうこととし、その謝金を平成24年度も20週分計上した。その他には、英語論文の校閲料および投稿料を計上した。平成23年度のPCRの検討では残高が発生したため、平成24年度に繰り越し、ELISA用の試薬に充てる予定である。
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Research Products
(9 results)