2011 Fiscal Year Research-status Report
チモーゲン顆粒膜タンパク質が作動する細胞内物流システムの解明
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23790808
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
川島 麗 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70392389)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | GP2 / アミラーゼ / トリプシノーゲン / エンドサイトーシス / チモーゲン顆粒 |
Research Abstract |
本研究の目的は、特定タンパク質動態の視点からメンブレントラフィック機構を解明するものである。膵臓腺房細胞のチモーゲン顆粒膜に特異的多量発現するタンパク質Glycoprotein 2 (GP2) の分子特性と物質輸送過程で常に入れ替わる相互作用分子を同定し、連携のしくみを明らかにする。 本年度の研究計画として、GP2の生物学的機能を明らかにすることから開始した。同等の飼育条件において、野生型マウスよりもGP2遺伝子を欠損させたGP2ノックアウトマウスでの摂食量を比較したところ、GP2ノックアウトマウスで摂食量に増加傾向が見られた。これより、消化吸収過程においてGP2の何らかの関連が示唆される。 また双方のマウス膵臓における外分泌関連遺伝子の生化学的および遺伝子発現解析を行った。野生型マウスとGP2ノックアウトマウスにおいて、野生型マウスにおいて絶食によるアミラーゼ酵素活性が低下したのに対し、GP2ノックアウトマウスでは酵素活性低下に対して低反応性を示した。リアルタイムPCRによる消化酵素遺伝子およびエンドサイトーシス関連分子の定量的解析を行ったところ、トリプシノーゲンの遺伝子発現において変化が見られた。野生型マウスでは、絶食により発現の上昇が見られたが、GP2ノックアウトマウスでは、発現の上昇が見られなかった。 これより飢餓状態では、細胞内酵素量および全身のタンパク質代謝回転の恒常性維持のため、分泌顆粒の構成性分泌を調整することで、余剰なチモーゲン顆粒の細胞内蓄積を制御するメカニズムが働いている可能性が示唆された。そして、このGP2はこの維持メカニズムが正常に働く上で重要な役割を担っていると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究成果として、GP2ノックアウトマウスの膵臓酵素活性に変化が見られたことから、消化吸収においてGP2が重要な役割を持つことが示唆されたことに関しては大きな進歩である。ただし今年度内で行う実験においての当初の計画では、エンドサイトーシスにおけるGP2の役割を明らかにするため、GP2ノックアウトマウス膵臓組織を用いたオルガネラ関連遺伝子の遺伝子発現解析までの結果を示す予定であったが、当初候補として挙げていた遺伝子すべての結果を得るに至らなかった。実験遂行の過程で、膵臓は消化酵素が多くオルガネラによっては発現が捉えられない分子があり、発現増幅の検討に時間を要していることが理由である。今後は、当初の計画通りの実験手法に工夫を加える予定としている。例えば、酵素活性抑制の使用および膵臓組織に処理を加え腺房細胞に単離するなどして、オルガネラ関連遺伝子の発現を維持し、低発現遺伝子の動態を捉えられると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
GP2ノックアウトマウスおよび野生型マウス膵臓の各種mRNAの発現( ERメンブレンマーカー (Calnexin)、ゴルジ体マーカー (58K GolgiまたはMannosidase II)、トランスゴルジネットワーク関連遺伝子 (TGN38)、脂質ラフトマーカー (Caveolin、Flotillin)、エンドソーム関連遺伝子 (Clathrin heavy chain、Early endosome antigen 1) )を定量比較する。さらに免疫組織染色法およびウエスタンブロティング法を用いてタンパク質レベルでの検討を行う。 マウス膵臓腺房細胞の各細胞内画分を比重遠心法を用いて分離し、抗GP2抗体を用いた免疫沈降法(IP法)により、GP2と複合体を形成する分子を単離後、電気泳動法および質量分析法によるタンパク質特定を試みる。リガンドタンパク質との相互作用時のGP2の糖鎖付加、リン酸化、脂質付加、メチル化、アセチル化等の翻訳後修飾を確認する。また、細胞骨格タンパク質のリン酸化との関連を検証する。ゴルジ体への移行経路阻害剤(ブレフェルジンA)やイオノフォア系阻害剤を用いた阻害実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度もひきつづき、実験マウスを常に維持するための基本費用が必要となる。解析には抗体、リアルタイムPCR関連試薬、合成オリゴ、電気泳動、細胞株、細胞維持関連試薬、細胞小器官分離用消耗品、免疫沈降用試薬、翻訳後修飾解析用試薬、分子間架橋用消耗品、発現クローニング用試薬、プラスチック消耗品の使用が不可欠のため、計1,500千円程度の使用を予定している。研究成果を発表する場を得るため、学会開催地への旅費として、計250千円前後の使用を予定している。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Interleukin-13 damages intestinal mucosa via TWEAK and Fn14 in mice-a pathway associated with ulcerative colitis.2011
Author(s)
Kawashima R, Kawamura YI, Oshio T, Son A, Yamazaki M, Hagiwara T, Okada T, Inagaki-Ohara K, Wu P, Szak S, Kawamura YJ, Konishi F, Miyake O, Yano H, Saito Y, Burkly LC, Dohi T.
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Journal Title
Gastroenterology
Volume: 141
Pages: 2119-2129
DOI
Peer Reviewed
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