2011 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌感染時における十二指腸上皮細胞の鉄吸収異常と鉄毒性に関する検討
Project/Area Number |
23790811
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平田 賢郎 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40570932)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Helicobacter pylori |
Research Abstract |
Helicobacter pylori(H. pylori)感染が鉄欠乏性貧血を誘導する、という臨床報告が近年多数発表されている。鉄は積極的な排出系を持たないことから、我々は鉄欠乏の原因が唯一の鉄吸収の場である十二指腸の異常にあると考えた。そこで我々は、H. pylori感染が宿主側の鉄代謝異常を誘導するという仮説のもと、十二指腸上皮細胞膜に存在する鉄輸送体と細胞内外鉄調節因子の挙動を解析し、H. pylori感染にて鉄欠乏となる機構と、鉄が十二指腸に与える酸化ストレスの影響について解明することを目指した。また、鉄欠乏性貧血(IDA)は、H. pylori関連疾患であることが示唆されており、H. pylori感染者は非感染者に対しIDAの有病率が2.8倍多いという報告がある。また、2004年には多施設共同試験でIDA患者17例に除菌療法を行ったところ、Hb値が8.5±1.5mg/dlから12.6±1.1mg/dlへと有意に改善した(p< 0.001)との報告があり、H. pylori感染IDA患者に対する除菌療法は効果的である。このように臨床データでは、H. pylori感染とIDAの関連が強く示唆されているが、その分子学的機序は不明であった。FPN1は、十二指腸上皮細胞の基底側に存在する鉄輸送体タンパク質である。FPN1は肝臓産生ホルモンであるHepcidinによって負に調節されることがわかっている。そこで本年は主に鉄輸送関連タンパク質のmRNA、タンパクレベルの解析と、肝発現Hepcidin動態、十二指腸細胞内鉄濃度などの解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は本年、H. pylori感染時における鉄代謝ホルモンであるHepcidinとHepcidinのターゲット分子であるFPN1動態の変化を検討した。H. pylori感染C57/B6マウスを用いて、肝臓におけるHamp1(mouse hepcidin)のmRNA発現量をreal time RT-PCR法にて解析したところ、HP感染群では対照群に対する有意な上昇を認めなかった。また血中のHepcidin値をELISAにて解析したが、血中Hepcidin-25発現量は両群において有意な差を認めなかった。さらにFPN1のmRNA、タンパク発現についても解析したが有意差を認めなかった。さらに十二指腸における鉄蓄積を解析したが、両群に変化は認められなかった。プルシアンブルーによる鉄染色においては、十二指腸上皮細胞内に鉄の蓄積を認めることができたが、両群間で程度の差異を認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の検討では、対照群とH. pylori感染群との間で、Hepcidin発現量、FPN1発現量、さらには十二指腸上皮細胞内の鉄量、ともに有意な変化を指摘できなかった。このことは、H. pylori感染だけではヒトの鉄吸収システムは破綻しないことを意味している。今後は、本検討で構築したH. pylori感染マウスを用いて、十二指腸における知覚関連分子TRPV1とその機能につき解析を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主にin vivoの解析のために、実験動物、飼育費(エサなど)、各種抗体、試薬、実験器具(消耗品)などの購入、また学会などにおける成果の発表のための旅費に充てる。
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Research Products
(1 results)