2012 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリ菌感染時における十二指腸上皮細胞の鉄吸収異常と鉄毒性に関する検討
Project/Area Number |
23790811
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平田 賢郎 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40570932)
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Keywords | 十二指腸鉄代謝 |
Research Abstract |
Helicobacter pylori(H. pylori)感染が鉄欠乏性貧血を誘導する、という臨床報告が近年多数発表されている。鉄は積極的な排出系を持たないことから、我々は鉄欠乏の原因が唯一の鉄吸収の場である十二指腸の異常にあると考えた。そこで我々は、H. pylori感染が宿主側の鉄代謝異常を誘導するという仮説のもと、十二指腸上皮細胞膜に存在する鉄輸送体と細胞内外鉄調節因子の挙動を解析し、H. pylori感染にて鉄欠乏となる機構と、鉄が十二指腸に与える酸化ストレスの影響について解明することを目指した。 また、鉄欠乏性貧血(IDA)は、H. pylori関連疾患であることが示唆されており、H. pylori感染者は非感染者に対しIDAの有病率が2.8倍多いという報告がある。また、2004年には多施設共同試験でIDA患者17例に除菌療法を行ったところ、Hb値が8.5±1.5mg/dlから12.6±1.1mg/dlへと有意に改善した(p< 0.001)との報告があり、H. pylori感染IDA患者に対する除菌療法は効果的である。このように臨床データでは、H. pylori感染とIDAの関連が強く示唆されているが、その分子学的機序は不明であった。FPN1は、十二指腸上皮細胞の基底側に存在する鉄輸送体タンパク質である。FPN1は肝臓産生ホルモンであるHepcidinによって負に調節されることがわかっている。初年度は主に鉄輸送関連タンパク質のmRNA、タンパクレベルの解析と、肝発現Hepcidin動態、十二指腸細胞内鉄濃度などの解析を行ったが、明らかな有意差は認められなかった。2012年に胃のparietal cellにおいてもHepcidin産生が行われていることが発見され、今年度は胃のHepcidin産生について解析を行った。
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