2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790850
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 理宏 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70506493)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヘモグロビン / 酸素代謝 / 運動耐容能 |
Research Abstract |
ヘモグロビンとRSR-13の立体構造情報の検討により、RSR-13は、RSR-13の芳香環がヘモグロビンポケットにはまり込む事により、その効果を発すると予測された。そこで、RSR-13芳香環の置換基の構造を大きくする事でヘモグロビンとの結合が安定化し、薬剤効果が増強すると予測し、芳香環のメチル基をCF3に(SO1905)、CF3とBrに(SO1906)、ClとBrに(SO1907)変換した化合物を合成した。 最初に直接ヘモグロビンへの影響を検討するために、25℃、pH7.4の条件下で、ヘモグロビン溶液を用いて、ヘモグロビン酸素解離曲線を求めた。SO1905、1906、1907はいずれもヘモグロビン酸素解離曲線がVehicleに比し、右方移動しており、P50値は上昇した(P50, Vehicle: 4.6mmHg, RSR-13: 20mmHg, SO1905: 8.8mmHg, SO1906: 27mmHg, SO1907: 37mmHg)。さらに、SO1906、1907はRSR-13より右方移動を認め、P50値は上昇し、RSR-13より効果を持つ可能性が示唆された。 次に新規合成薬剤の赤血球膜透過性の影響等を加味するため、赤血球浮遊液を用い、37℃、pH7.4の条件下で、同様の実験を行った。赤血球浮遊液でのヘモグロビン酸素解離曲線の右方移動は、SO1905はRSR-13とほぼ同等であり、SO1906、SO1907はRSR-13より、さらなる右方移動、P50値の上昇を認めた(P50, Vehicle: 29mmHg, RSR-13: 60mmHg, SO1905: 58mmHg, SO1906: 83mmHg, SO1907: 86mmHg)。 以上より、SO1906、SO1907はRSR-13よりヘモグロビン酸素親和性を下げる事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヘモグロビンとRSR-13の立体構造情報の検討により、RSR-13の芳香環がヘモグロビンポケットにはまり込む事により、その効果を発すると予測された。そこで、芳香環の置換基の構造を大きくする事で新規薬剤を合成し、その効果を示す事が可能であった。 しかし、現在得られている薬剤は本研究の目的の一つである、低い濃度ではRSR13とほぼ同等の効果しか発揮しない事が明らかとなった。 一方、さらに芳香環の置換基を大きくすることをおこなったが、スクリーニング検査でヘモグロビンの変性や赤血球の溶血が起こる事が明らかとなり、未だ十分な効果を発揮する薬剤を合成出来ていない。 これまで合成した薬剤のスクリーニング結果とコンピュータで構築したファーマコフォアモデルのドッキングスコアとの比較により、薬剤合成の効率は上がると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、RSR13の芳香環の置換基を変更することで、薬剤を合成してきたが、ヘモグロビンの変性や赤血球の溶血のため、これ以上の効果を得る事は困難となってきている。 一方、これまで合成した薬剤のスクリーニング結果とコンピュータで構築したファーマコフォアモデルのドッキングスコアとの比較により、コンピュータ上での薬効予測が可能となってきている。これらの知見を生かし、今後はRSR13の骨格を変更することで、薬剤効果の発揮を目指す。 得られた薬剤は引き続き、1次スクリーニング、2次スクリーニング、3次スクリーニングを行い、効果を判定する。もっとも効果が予想された薬剤に対しては、マウス心筋梗塞心不全モデルに投与を行い、運動耐容能に対する評価を行うと共に、運動耐容能改善に対するメカニズムの評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. RSR13を出発点とした創薬候補化合物の合成研究:これまで得られた薬剤のスクリーニング結果を生かし、RSR13の骨格の変更を行い、その効果を検討する。これまで得られた芳香環の置換基の変更と組み合わせより効果の高い薬剤を求める。2. 候補化合物についてのヘモグロビン酸素親和性に対する効果の検討:1次スクリーニング(大気圧下でのヘモグロビン酸素飽和度の測定)、2次スクリーニング(ヘモグロビン溶液を用い、ヘモグロビン-酸素解離曲線の計測)、3次スクリーニング(ヒト赤血球浮遊液を用たヘモグロビン-酸素解離曲線の計測)を実施する。3. マウス心不全モデルにおける候補化合物運動能に関する効果の検討:マウス心筋梗塞心不全モデルにおいて候補化合物を静注しトレッドミルにての運動耐容能を検討する。心エコー法により心機能に対する効果の検討を行う。運動耐容能改善のメカニズムの検討するため、候補物質静注後の心不全マウスにおける血管拡張能、血管内皮機能、筋肉の生化学的変化、神経機能変化、血液変化などを検討する。4. マウスの生命予後の検討:候補化合物の1ヶ月の連続投与による予後、効果、心機能の判定を行う。5. 組織での活性酸素種の増加の有無と抗酸化薬やβ阻害薬併用効果の検討:マウス心筋、骨格筋に対し、8-OHdGの染色等を行い、酸素代謝亢進により引き起こされると予測させる活性酸素による細胞障害の有無を検討する。細胞障害が認められた際には、既存の抗酸化薬が細胞障害抑制に効果があるか検討する。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Calpain protects the heart from hemodynamic stress.2011
Author(s)
Taneike M, Mizote I, Morita T, Watanabe T, Hikoso S, Yamaguchi O, Takeda T, Oka T, Tamai T, Oyabu J, Murakawa T, Nakayama H, Nishida K, Takeda J, Mochizuki N, Komuro I, Otsu K.
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Journal Title
J Biol Chem.
Volume: 286(37):
Pages: 32170-7
DOI
Peer Reviewed