2011 Fiscal Year Research-status Report
副交感神経活動による抗炎症作用の分子機序解明と大動脈瘤の非侵襲的制圧への応用
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23790858
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
有川 幹彦 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20432817)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 生体機能利用 / 心機能保護 / コリンエステラーゼ阻害剤 / アセチルコリン |
Research Abstract |
現代の高齢化社会における心血管疾患の治療法開発および予防対策は、循環器領域の基礎・臨床研究における重要克服課題のひとつである。近年、アセチルコリン(ACh)を介した副交感神経活動の抗炎症反応経路の存在が提唱され、副交感神経系への直接介入による心血管疾患に対する新規治療法の開発が期待される。本研究では、大動脈瘤病態におけるAChの抗炎症反応、および大動脈血管の構造的・機能的リモデリングに対する制御機構を分子レベルで明らかにし、副交感神経活動がもたらす心血管疾患の病態改善作用のメカニズムを分子レベルで理解することを目的とした。 ACh分解酵素阻害剤のひとつであるドネペジルは内在性のAChレベルの上昇を引き起こす。単離マクロファージ初代培養系に対する効果について検討した結果、ドネペジルは内毒素による炎症刺激によって誘発される細胞外基質分解酵素の産生を抑制した。しかしながら、TNF-αを含む他の炎症性サイトカインに対する効果は見られず、また、AChやACh受容体阻害剤の影響も見られなかった。このことから、ドネペジルのマクロファージ細胞外基質分解酵素の産生抑制は、コリン作動系から独立した特異的作用と考えられる。ドネペジルは内毒素による炎症刺激の有無に関わらず、マクロファージの細胞外基質分解酵素を転写レベルで抑制し、その合成量および分泌量を減少させることが明らかになった。 本研究では、ACh分解酵素阻害剤を用いた副交感神経系への直接介入による大動脈瘤に対する内科的薬物治療法の確立を目的として、マウス腹部大動脈瘤モデルに対するドネペジルの短期的・長期的評価を計画した。しかしながら、塩化カルシウム誘発性の腹部大動脈瘤モデルが再現性に乏しく、ドネペジルの効果を評価でき得るモデルの作成にまで至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス腹部大動脈瘤モデル作成の再現性が乏しいため、塩化カルシウムの濃度や処理時間、処理法について検討を行った。しかしながら、偽手術群に比べて腹部大動脈径の有意な増加が見られないなど、現時点で安定したモデル作成には至っていない。加えて、本研究に即した研究成果の発表機会が多かったこともあり、十分な検討時間が確保できなかったことも本研究の現在までの達成度がやや遅れていることの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、安定したマウス腹部大動脈瘤モデルを作成できるようにすることが急務である。そのために、塩化カルシウム処理と浸透圧ポンプによるアンジオテンシンII持続投与の組み合わせや、ApoEノックアウトマウスに対するアンジオテンシンII投与による腹部大動脈瘤モデル作成を検討する。 ドネペジルの炎症反応に対する作用について、マクロファージ培養株での実験を行い、同株を用いた既報の実験結果との比較評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究進捗状況が遅れていることもあり、研究経費の残額を次年度に繰り越した。本年度は、1)腹部大動脈瘤モデル作成のための正常マウスおよび疾患モデルマウスとモデル作成用器具類の購入費、2)マクロファージ細胞株および培養試薬・培養器具類の購入費、3)炎症反応の程度を評価するための各種炎症関連因子に対する抗体の購入費、および4)本研究に即した研究成果の発表旅費としての使用を計画している。
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Research Products
(8 results)