2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790862
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 浩司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (10452757)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 心不全 / 圧負荷 / 認知機能障害 / シグマ受容体 / 交感神経活動 |
Research Abstract |
高血圧性心臓病モデルとして、圧負荷モデルを用いて研究を行っている。特に、本モデルにおいて圧負荷後一定期間をおいた後に食塩負荷をすることで、心機能低下が増強されることを確認しており、圧負荷のみの群を軽症心不全モデル、圧負荷+食塩負荷群を重症心不全モデルとして、脳内シグマ受容体と認知機能との関連を検討している。 心不全モデルにおいて、脳内のシグマ受容体発現が低下していることを確認した。 さらに、脳室内へのシグマ受容体アゴニスト(PRE084)を持続投与することで、心不全モデルで減少した脳内シグマ受容体発現が回復することを確認した。また、同時に心不全モデルにおいて亢進していた交感神経活動も脳内シグマ受容体アゴニスト慢性投与により有意に抑制されることを確認した。 以上の結果から、圧負荷モデルにおける交感神経活性化に脳内シグマ受容体減少が関与することが示唆される。現在、実際の認知機能への影響を検討中である。認知機能評価においては、心不全モデルという性質上、心肺への負担が少ないと考えられる、Y路迷路試験で行っている。空間作業記憶により認知機能評価を行っているが、現時点でが、統計学的有意差までは至っていないが、心不全モデルで低下している傾向もあり、今後実験を重ねる予定である。脳内へのシグマ受容体siRNA導入に関しては、現在条件設定中であるが、次年度早い段階で最適条件を確定し、siRNAを用いて本実験を開始できると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、シグマ受容体のsiRNA導入まで今年度中に行う予定であったが、条件設定(投与量)がまだ十分にできていないことから、実際の本実験まで至っていない。その他の予定していた実験計画に関しては、下記の通り一部統計学的に有意差が確認できていない実験もあるが、いずれも傾向は確認できており、今後個体数を増やすことで有意差も確認できると予想される状況である。 高血圧性心臓病をモデルにした圧負荷心不全モデルにおいて、脳内シグマ受容体が減少し、その減少が脳内へのシグマ受容体アゴニスト刺激で回復すること、さらに心不全モデルで亢進している交感神経活動が脳内へのシグマ受容体アゴニスト刺激で抑制されることを確認できたことから、心不全において脳内シグマ受容体が何らかの役割を演じていることは強く示唆される結果が得られている。さらに、Y路迷路試験においても、心不全モデルにおいて認知機能が低下している傾向を認めており、今後個体数を増やすことで、有意差の確認が可能と考えられる。脳内へのシグマ受容体アゴニスト(PRE084)投与群において、認知機能が改善する傾向がみられることから、この群においても次年度の早い段階で、Y路迷路試験を行う個体数を増やすことで、有意差の確認ができると予想される。この結果が確認できれば、心不全における脳内シグマ受容体減少と交感神経活動亢進と認知機能障害の関連を明らかにできると考えられ、来年度早々に本研究で最も重要な仮説を照明できると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、本研究の最も重要な仮説を証明するために、Y路迷路試験の個体数を増やすことで、有意差の有無を確認する。平行して、シグマ受容体siRNAの脳内投与条件設定の最適化をはかり、速やかに本実験に移行する。 脳内のシグマ受容体減少が、交感神経活動亢進を来たし、認知機能障害も呈することを、尿中カテコラミン排泄量測定、Y路迷路試験で確認する。上記実験は、今後の早期の段階で完遂することを目指す。 本モデルにおいて、脳内および血中の神経ステロイド(DHEAS; dehydroepiandrosterone sulfate)が低下していることを確認している。生体でのアゴニストとされるDHEAを補充することで、特に臨床で有用性を確認する意味から、経口でDHEASの補充を行い、脳内のDHEASの増加を介して、脳内シグマ受容体増加、交感神経活動抑制、さらに認知機能改善を認めるかを確認する。 さらに、DHEA補充療法については、上記治療プロトコールに加えて圧負荷を加える前よるDHEA補充を行っておくことでの心不全抑制効果が認められるか否か(予防プロトコール)の確認も実験進捗状況によっては確認する。 各種実験方法(交感神経活動評価、認知機能評価、蛋白発現評価など)は、既にこれまでの実験で確立している方法を用いて行うことから、今後の実験おいて特に大きな障害となる問題はないと予想される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、設備備品の購入の必要(計画)もなく、研究費の多くは実験用動物購入費用、抗体など含めた各種試薬の購入費用として使用する予定である。さらに、研究計画まとめの年度でもあり、これまでに得られた研究成果発表のため、また他施設の研究者の意見を参考にするために、国内外の関連学会出席を予定している。そのため、その際の出張旅費に研究費の一部を使用する計画である。 前項に記載しているように、いくつかの実験においては、個体数を増やし統計学的な有意差を確認する必要がある。さらに、元々次年度に予定している実験に使用する実験用動物購入の必要もあり、当該年度以上に実験用動物購入費が必要となる予定ある。各種試薬購入に関しても、次年度においては特にシグマ受容体siRNA導入の最適条件が決定されれば、その条件での本実験のため、シグマ受容体siRNA追加購入や導入に用いるコラーゲンゲルの追加購入に、研究費を使用する予定である。 次年度は、研究成果をまとめる年度でもあり、研究成果はいくつかの学会で発表し、他の研究者の意見を聞きながら研究をより意義のある形にまとめていく計画である。 具体的には、海外学会では、アメリカ生理学会、国内学会では、高血圧学会、高血圧学会関連学会、循環器学会他への学会参加発表を計画している。最終的に、本研究成果を、英文雑誌に投稿する計画であるが、その際の英文校正にも研究費の一部使用を計画している。
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