2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞移植による血管新生・組織再生における転写調節機構の研究
Project/Area Number |
23790870
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
林 寿来 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30533715)
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Keywords | 血管新生 / 下肢虚血 / 転写調節因子 / Notch / Hrt1 |
Research Abstract |
近年、血管発生においてNotchシグナル伝達経路が重要な働きを有することが報告されている。Hairy-related transcription factor 1(Hrt1)および Hrt2は、Notchシグナルにより転写活性化を受ける下流転写因子であり、心血管系組織に豊富に発現している。HrtはNotch同様に血管発生を制御する必須の因子であると考えられている。一方、成体の虚血後血管新生においてNotch系が重要な役割を果たすことが知られているが、Hrtファミリーの病的血管新生における意義はこれまで明らかでなかった。 今回、私たちが大腿動脈結紮によるマウス下肢虚血モデルの作成と解析を行ったところ、虚血骨格筋組織においてHrt1 mRNAの顕著な発現亢進が確認されたが、Hrt2 mRNAの発現誘導は限定的であった。マウス下肢骨格筋組織中の血管内皮細胞を分離したところ、Hrt1の遺伝子発現が確認された。さらに、培養血管内皮細胞におけるHrt1 mRNAの発現は、Notch系の活性化因子として知られるVEGF刺激によって著しい亢進が認められたが、Hrt2 mRNAの発現変化はみられなかった。以上の結果から、Hrt1は虚血骨格筋組織の血管内皮細胞におけるNotch系の主要なシグナル伝達分子であることが示唆された。Hrt1 KO マウスは成体において明らかな心血管系の異常を示さないが、下肢虚血手術後の血流回復が野生型に比べて減弱し、骨格筋組織内の血管新生も抑制されていた。これと符合して、Hrt1 KOマウスの虚血肢では、ネクローシスや欠失などの組織傷害の頻度が著しく増加していた。以上の結果より、Hrt1は虚血が誘導する血管新生において重要な役割を有することが示された。
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Research Products
(1 results)