2012 Fiscal Year Annual Research Report
誘導多能性幹細胞由来心筋細胞の機能解析および質の検討
Project/Area Number |
23790877
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大野 洋平 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (80383884)
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Keywords | 心臓再生療法 / 人工多能性幹細胞 |
Research Abstract |
本研究では、様々なiPS細胞ラインの多能性幹細胞としての生物学的性質の違い、各細胞ラインの心筋細胞への分化効率の違いとその要因を検討し、iPS細胞由来心筋細胞が細胞移植源として適しているかを「安全性」と「質」という二つの側面からの評価を行った。 各iPS細胞ラインの幹細胞としての質を解析するために、Fbx-iPS、Nanog-iPS、3因子iPS、Transgene free iPSのiPS細胞ラインとES細胞を使用した。各ライン間で心筋細胞分化誘導効率を検討した結果、Nanog-iPS細胞はFbx-iPS細胞に比べて心筋への分化がより早く、より効率がいいことが判明した。また、各iPS細胞ラインから拍動心筋細胞へ分化したものを経時的に未分化マーカー・中胚葉・心筋構造蛋白・転写因子などの発現パターンを解析したところ、Nanog-iPSおよびES細胞由来心筋はほぼ同様の遺伝子発現パターンを示したが、Fbx-iPS細胞由来心筋は遺伝子発現が弱く、かつ発現のピークに至るまでの時間が遅いことが判明した。iPS細胞由来心筋細胞の電気生理学的特性はES細胞由来心筋細胞と同様に、ペースメーカー様、心房筋様、心室筋様の活動電位が記録され、薬剤に対する反応はES細胞のそれと同様であった。各iPS細胞ラインの質的相違を解析するため、iPS細胞由来心筋細胞を純化後、iPS細胞作成時に使用された4つの外来遺伝子の発現レベルを比較したところ、Nanog-iPS細胞由来心筋細胞に比べ、Fbx-iPS細胞由来心筋細胞の方が外来遺伝子の発現が高く、心筋細胞への分化抵抗性の一因と考えられた。 今後、各iPS細胞由来心筋を純化したものをマウスに細胞移植療法を行い、腫瘍形成・不整脈の有無を確認し、その後、心不全モデルのマウスに移植することで心機能および生命予後の改善が得られるかを検討することにしている。
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