2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790882
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
川浪 大治 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50568889)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 血管内皮 / ROCK / 動脈硬化 |
Research Abstract |
平成23年度はROCKの血管内皮機能調節機構について検討をおこなった。糖尿病モデルであるdb/dbマウスでは血管内皮機能障害が惹起されていることが明らかになっているが、この機序としてROCK活性亢進の関与が示されている。そこで、ROCK阻害剤ファスジルがdb/dbマウスの大動脈における動脈硬化マーカーに及ぼす影響を検討した。その結果、db/dbマウスの大動脈ではケモカインであるMCP-1の発現が亢進していたが、ファスジル経口投与によりこのMCP-1発現が抑制されることが明らかとなった。さらに詳細なメカニズムを検討するため、培養血管内皮細胞(HUVEC)を用いた検討を行った。トロンビンは糖尿病をはじめとして、動脈硬化の形成に重要な働きを有することが知られている。そこで、トロンビンによる血管内皮障害にROCKが果たす役割を検討した。HUVECをトロンビンで刺激したところMCP-1の発現が誘導されることを確認した。トロンビン刺激によってHUVECのRho/ROCK活性が亢進していたことから、ROCKがトロンビンによるMCP-1発現に関与しているものと考えられた。実際、ROCK阻害剤Y-27632はトロンビンによるMCP-1の発現誘導を抑制した。細胞内シグナルの検討を行ったところ、p38MAPK阻害剤であるSB203580がトロンビンによるMCP-1の発現を抑制した。このためp38MAPKの活性化に対するY-27632の効果を検討した。その結果、Y-27632はトロンビンによるp38MAPKのリン酸化を抑制することが明らかになった。さらにNF-kBのコンポーネントであるp65のリン酸化もY-27632は抑制した。以上の結果から、ROCKがトロンビンによるMCP-1の誘導を、p38MAPKおよびNF-kBの活性化を抑制介して促進することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ROCK阻害剤を用いた血管内皮機能調節機構の解析に予想以上の時間を要したため、ROCKのアイソフォームの詳細な機能解析を行うに至らなかった。ROCKアイソフォームの機能を十分に検討したのちに、遺伝子改変マウスの検討に向けた準備に取り組む必要があったためにin vivo実験へ向けた進捗が予定より遅れていると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、in vivoの解析も同時に進めていきたいと考えている。具体的には遺伝子改変マウスを用いてROCK2の血管内皮機能調節機構の解析を行う。また、ROCK2遺伝子改変マウスに関してはノックアウトマウスをもちいた検討を進めていくことを考慮していく。また、動脈硬化に関与する血管内皮以外の細胞系についてもROCKが果たす機能について、必要に応じ解析を進めていきたい。その際は、マクロファージや単球におけるROCKの機能も解析を行い、多面的なアプローチによりROCK2による動脈硬化形成メカニズムの解明に努めたい。さらにROCKが動脈硬化関連遺伝子を制御するメカニズムをさらに追及するとともに、ROCKを介して血管内皮機能障害を惹起する因子の探索も進める。アイソフォーム特異的な機能の解明に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究推進方策に沿って実験を遂行するために研究費を使用する。平成23年度の未使用額については研究の振興が当初計画よりも遅れたために生じたものであり、24年度には23年度に達成できなかった遺伝子改変マウスの解析やROCKアイソフォーム特異的欠損細胞の作製に取り組むための研究費として前年度の未使用研究費も24年度研究費に組み込んで研究を遂行する。
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Research Products
(3 results)