2011 Fiscal Year Research-status Report
肺癌のALK阻害薬耐性化機序の解明と、耐性化癌細胞にも有効な新規治療法の開発。
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23790906
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長友 泉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (10570583)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 肺癌 |
Research Abstract |
はじめに、EML4-ALK陽性肺癌細胞株(H2228)を用いて、ALK阻害剤(Crizotinib)に耐性の細胞株を樹立した。具体的には、Crizotinibを含む培養液で3ヶ月間継続的に培養し、得られた細胞集団から単クローンの細胞株を4系統樹立した。これまでに、ALK阻害剤耐性化の機序としては、EGFR阻害剤耐性化と同様に、薬剤標的タンパク質の遺伝子変異が大きな役割を果たすことが報告されている。そこで、耐性株のALK遺伝子に二次的変異が生じているか否かを検討した。細胞からゲノムDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いた実験系でALK遺伝子を解析したところ、親株と比較して異なる配列部位は認められなかった。すなわち、我々の系においては、耐性化に二次的変異は関与していないと判明した。次に、親株と耐性株で異なる発現パターンを示す遺伝子を検索した。total RNA を抽出し、cDNAライブラリーを作製し、RT-PCRを施行した結果、癌幹細胞マーカー等の多くの遺伝子について差異を認めなかったが、これまでに癌での関与があまり知られていない一群の遺伝子ファミリー(セマフォリン)に関して、一部の耐性株で特徴的な発現パターンが認められた。これらの機能的な解析は未だ行っていない。また、親株と耐性株で異なる活性化パターンを示すシグナル伝達経路の検索も行った。通常の培養条件下では、あまり大きな差異は認められなかったが、低血清などのストレス状況下において、PI3K-Akt経路の特徴的な活性化パターンが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の目標としては、ALK肺癌の特性を単に解析するのみでなく、変異EGFR陽性肺癌と比較しながら解析することを掲げていたが、これら細胞間ではバックグラウンドが大きく異なるため、当初思い描いたような形での比較検討は行えなかった。しかし条件設定に工夫をした結果、今後は改善が見込める状況となっている。また、より網羅的なタンパク発現解析も行う予定であったが、条件設定等の予備段階で遅れが生じたため、未だ本格的に開始出来ていない状況である。しかしこれも上記と同様に、今後の改善が見込める段階には進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
<現在までの達成度>の項で述べたように、本来予定していた計画と比較して、より少ない材料を用いて研究したことと、網羅的な解析を未だ本格的に開始していないことが要因となって、次年度使用額が生じた次第である。ただしこれらは、予備実験に時間を要してしまったことが原因であるので、大筋では当初計画に変更はなく、今後はこれまで遅れている分を取り戻せるように推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに判明した、ALK肺癌で特徴的に発現している、あるいは活性化している遺伝子/タンパクについて、その耐性化における機序を解析する。また、これらが、EGFR阻害剤耐性化に関しても同様に機能しているか否かを検討する。より包括的に機序を理解するため、発現の網羅的解析に着手する。
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