2012 Fiscal Year Research-status Report
環状ジグアニル酸を介する病原性制御機構をターゲットとした新規感染症治療法の探索
Project/Area Number |
23790925
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
木村 聡一郎 東邦大学, 医学部, 助教 (60408870)
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Keywords | c-di-GMP / Quorum sensing / 緑膿菌 / マウス / 肺炎 |
Research Abstract |
本研究では、c-di-GMPを介する病原性制御機構を対象とした新規治療法のターゲット分子と病原因子制御薬を探索し、マウス感染モデルを用いて評価を行う予定である。本年度は、以下の2項目について検討を行った。 1.二つの病原性制御機構との関連性について 本研究で対象としている病原性制御機構であるc-di-GMPシグナル伝達機構と共に、Quorum sensing(QS)と呼ばれる制御機構は広く病原性に関与することが知られており、既に我々の研究グループでも複数の成果を報告している。しかし、これら両者の関連性についてはほとんど知られていないのが現状である。そこで昨年度までに作成したc-di-GMP関連遺伝子欠損株(Δpde)と、既に保有しているQS関連遺伝子欠損株(ΔlasI、ΔrhlI)を用いて、これらの関係性について検討した。その結果、QS機構はpde遺伝子の発現に対して正に制御しており、一方でpde遺伝子は直接的もしくは間接的にQS機構を負に制御していることが分かった。 2.バイオフィルム形成へのpde遺伝子の関与 これまでバイオフィルムの測定にはクリスタルバイオレット法を用いていたが、野性株と比較して欠損の影響は見られなかった。今回、共焦点レーザー顕微鏡を導入したのを機に、GFPラベルした菌株を作成し、バイオフィルム形成におけるpde欠損の影響を調べた。その結果、野性株と比較して欠損株では、バイオフィルムの形成スピードが速く、バイオフィルムの層が厚いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に策定した「今後の研究の推進方策等」では、バイオフィルムに関する検討と候補遺伝子欠損株の作出を計画していた。本年度はバイオフィルムに関する検討と共に、当初予定していなかった病原性に広く関わるとされているQS機構とc-di-GMPシグナル機構との関連性についても検討を加えた。特に後者については、これまでほとんど報告されていない内容であることからも、今後さらなる検討を加えて報告する予定である。一方、当初予定していた候補遺伝子欠損株の作出については、選抜された2遺伝子のうちの1つは既に実施済みであり、かつその機能について詳細に検討していたことから、本年度内での実施はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に加えて、以下の点については研究計画に修正・追加して実施予定である。 1.候補遺伝子欠損株の作出 二つの候補遺伝子が選抜されているため、残りの1候補遺伝子について欠損株の作出を行う予定である。 2.感染における宿主側因子の評価 これまでマウス肺炎モデルを用いて菌株の評価を行っているが、肺内菌数のみの評価となっているため、宿主側の感染防御因子等について検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費の使用はほぼ予定通りであったが、初年度の残額がそのまま繰り越されている状況である。消耗品費に関しては、上記研究計画においてマウスを用いた評価が追加されたことから、これらの購入費用が当初予定していた予算に上乗せされる予定である。旅費に関しては、研究調査および参考となる研究成果を挙げている研究者との討論に使用予定である。
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