2011 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性腎症における核内受容体PPARδの分子機構の解明と臨床応用
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23790942
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小川 大輔 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70535195)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎症 / 核内受容体 |
Research Abstract |
糖尿病動物モデル(ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウス)を用いて、核内受容体PPARδアゴニスト(GW0742)の糖尿病性腎症への治療効果を検討した。糖尿病誘発後8週の時点でGW0742の投与により尿中アルブミン排泄量の有意な減少を認めた。また、腎糸球体の肥大やIV型コラーゲンの蓄積といった組織学的変化もGW0742の投与により改善を認めた。さらに慢性炎症の評価である腎組織内のマクロファージの浸潤や炎症性サイトカインの遺伝子発現も検討した。その結果、GW0742の投与によりMCP-1、CCR2、TGF-β、OPNの遺伝子発現は減少したが、TNF-α、ICAM-1の遺伝子発現に影響はなかった。またマウスマクロファージ細胞においては高糖濃度刺激によりBcl-6発現が減少し、GW0742の添加により改善した。さらにPPARδ抗体を用いた免疫沈降法を用いて核内におけるPPARδとBcl-6の関係を検討したところ、高糖濃度刺激によりPPARδに結合するBcl-6が増加しfree Bcl-6が減少していたが、GW0742添加によりそれらが改善した。MCP-1、OPNの遺伝子発現は高糖濃度刺激で増加し、GW0742添加で減少した。以上の結果より、リガンドが結合していないPPARδにはBcl-6が結合しておりMCP-1の転写抑制に利用されていないが、PPARδアゴニストが結合することで、Bcl-6が遊離し、MCP-1の転写抑制因子として働くと考えられた。さらにPPARδアゴニスト投与でOPNの発現が抑制されていることから、PPARδの活性化によるOPNの発現抑制が糖尿病性腎症の進展の抑制に関与している可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究により、1型糖尿病マウスにおいてPPARδアゴニスト投与により糖尿病性腎症の指標である尿中アルブミンの有意な減少を認め、腎組織においてはマクロファージの浸潤や糸球体肥大が抑制されることが明らかになった。また、培養細胞を用いた実験によりPPARδアゴニストは炎症に関与するBcl-6、MCP-1を介して炎症を抑制することにより糖尿病性腎症の進展を抑制することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓由来の糸球体上皮細胞、近尿細管細胞、メサンギウム細胞、集合管細胞株を用いて核内受容体PPARδの発現を検討する。また、高糖条件下で培養した際の発現変化を検討する。さらに2型糖尿病モデルであるdb/dbマウスを用いて同様の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費にて上述の研究を実施し、残金(9391円)が生じたため、次年度は今年度の残金と次年度の研究費を合わせて、各種培養細胞およびdb/dbマウスの購入、細胞培養試薬、RNA抽出キット、PCR関連試薬の購入にあてる。
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