2012 Fiscal Year Research-status Report
腎産生GABAの分泌調節が、高血圧の成因維持に果たす役割の解明
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23790949
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
谷田部 淳一 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (10566681)
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Keywords | γ-アミノ酪酸 / GABA / 高血圧 / ナトリウム / SHR |
Research Abstract |
【目的】γ-アミノ酪酸 (GABA) をヒトまたはラットに経口投与するとナトリウム利尿が惹起され、血圧が低下する。しかし、腎臓におけるGABAの機能は不明である。そこで、ラット腎におけるGABA系を検討した。 【方法】9週齢のWistar-Kyoto rat(WKY)と高血圧自然発症ラット(SHR)、ラット近位尿細管細胞株(NRK-52E)、ラットメサンギウム細胞株(CRL-2573)にて実験した。リアルタイムRT-PCR法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法、HPLC法を用いた検討をした。 【結果】新鮮腎切片やNRK-52Eの培養上清では、対照と比して有意にGABA濃度が高かった。食塩負荷、ドーパミン、アンジオテンシンIIの刺激により腎からのGABA分泌が促進された。WKYの腎皮質にはGABA(A)受容体α1、β3、πサブユニット、GABA(B)受容体R1、R2サブタイプ、GABA(C)受容体ρ1、ρ2サブユニット、GABA輸送体の GAT2、GABA合成酵素のGAD65、GAD67、GABA分解酵素のABATが、それぞれユニークな腎内局在で発現していた。またNRK-52E細胞では、WKYと同様にGABA(A)α1サブタイプの発現が見られたが、CRL-2573では極めて低発現であった。α3はCRL-2573にのみ発現していた。GABA(A)受容体πサブユニットとGABA(B)受容体はSHRで有意に低発現であった。食塩負荷はGABA(B)R2サブタイプの発現を低下させた。NRK-52EのGABA(B)受容体を刺激するとMAPKの活性化が見られた。 【結論】腎には、GABAの合成から作用・輸送・分解まで担いうるGABA系が存在し機能している。この結果は、GABAによる腎臓での血圧調節機構を解き明かす手がかりになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 腎におけるGABA分泌は、何によって調節されるか。:ドーパミン、アンジオテンシンなどにより調節されると思われ、細胞を用いた実験系を立ち上げた。 2. その調節機序に、正常血圧モデルと高血圧モデル動物間で差異があるか。:SHRにおいては、WKYと比して血漿GABA濃度に差異が見られることを明らかにした。調節機序を今後検討する必要がある。 3. GABA(B)受容体を介した情報伝達により、尿細管機能が変化するか。:GABAによる刺激により、培養近位尿細管細胞のシグナル伝達が変化することをつかんだ。NaKポンプの発現は変化しなかったため、今後は活性を測定するか、違う効果器を検討する。 4. 腎において、GABA(B)受容体はGRK4により脱感作されるか。:未だ未検討であり、今後実験系を立ち上げる。GRKの発現ベクターは作成済み。 5. GABA(B)受容体を介した情報伝達は、GRK4の活性レベルに応じて変化するか。:GRKの各種発現ベクターを導入してGABA(B)受容体からの刺激が変化するかどうかを見る。その際、3.に挙げた尿細管機能の評価法が重要となるため、この実験系を確立することが肝要である。
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Strategy for Future Research Activity |
GABAのリアルタイムイメージングを検討する。 GABA受容体の発現形式について、各種セグメントマーカーと蛍光二重染色法を用いて明らかにする。 GABA(B)R2受容体は、皮質集合管に多く発現している。集合管のモデルとなる培養細胞は入手が困難な為難しいが、アンジオテンシン、ドーパミンの刺激により、GABAの情報伝達系がどのような影響を受けるのかを明らかにする。 腎臓において、GAD67やGAD65の発現量は脳におけるそれよりも有意に少ない。また、GAD67のヘテロノックアウトマウスにおいては、血圧に関する表現型に差異はないものの、尿中GABA排泄量が有意に多いことが示された。GAD67の発現低下に関連し、腎におけるGABA産生が、他の酵素を介して代償性に増加している可能性がある。腎においてGABA産生を司る経路を明らかにする。 GRK4とGABA(B)受容体のクロストークについて検討する。具体的には、GRK4とGABA(B)受容体の共発現について免疫染色法や免疫沈降法を用いて調べる。各種GRK4の遺伝子変異を導入した発現ベクターを用いて、GRK4の活性を変化させた際に、GABA情報伝達系がどのような影響を受けるかについて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
抗体、実験動物、逆転写キット、リアルタイムPCR試薬、蛋白電気泳動ゲルなどの消耗品。 実験動物の購入、飼育費用。 学会旅費、論文出版費用。
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