2011 Fiscal Year Research-status Report
新規尿酸排泄トランスポーターNPT4のPDZK1による尿酸輸送制御機構の解明
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23790952
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
福冨 俊之 杏林大学, 医学部, 助教 (30439187)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 尿酸トランスポーター / 高尿酸血症 / 尿酸 / NPT4 / PDZK1 / 尿酸排泄 / 質量分析 |
Research Abstract |
腎臓の尿酸排泄低下は高尿酸血症を引き起こし、痛風や腎機能障害などの合併症を誘発する。その為、尿酸排泄機構は生体にとって極めて重要な機構である。最近我々は、オーファン輸送体NPT4が腎近位尿細管管腔側で尿酸排泄を担い、その機能不全が高尿酸血症を惹起することを明らかにした。そこで本研究計画は、新規尿酸排泄輸送体NPT4の機能調節に関わる結合タンパク質を同定し、それに伴う尿酸の排泄制御機構の解明を目的とする。 これまでにNPT4のC端と腎臓cDNAライブラリーを用いてYeast two hybrid (Y2H)スクリーニングを行い、NPT4の結合タンパク質の候補としてPDZK1を同定した。PDZK1は細胞内支持タンパク質で、PDZモチーフを持つ輸送体の輸送活性に影響を及ぼす。NPT4もPDZモチーフを持つことからPDZK1がNPT4の尿酸輸送制御に関与する可能性が示唆される。従って、PDZK1のNPT4の機能調節の可能性に着目し検討を行った。NPT4とPDZK1の結合を確認する為、NPT4のC端とPDZK1を用いてY2H法により結合確認を行った。次に、NPT4とPDZK1の結合をGSTプルダウン法および免疫沈降法の生化学的手法により検討した。まだ不完全ではあるが、Y2H法および生化学的手法においてもそれらの結合は示唆された。加えて、結合部位の同定および結合様式の検討の為、NPT4のPDZモチーフの変異体作製、PDZK1の4つのPDZドメインごとのコンストラクト作製を行った。また、結合部位同定に用いる液体クロマトグラフィーと質量分析計を組み合わせたシステム(LC/MS)の分析条件の最適化および膜タンパク質であるNPT4の可溶化方法の条件検討を行った。さらにPDZK1によるNPT4の尿酸輸送に対する機能解析と細胞内局在への影響の検討に必要なNPT4安定発現細胞の作製に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の達成度を「やや遅れている」と自己評価した理由を以下に示す。 本研究計画では、NPT4とPDZK1の結合部位の同定に液体クロマトグラフィーと質量分析計を組み合わせたシステム(LC/MS)の使用を計画している。申請時の研究計画では、研究協力者の指導を仰ぎ、研究協力者の所属大学の既に稼働しているLC/MSの利用を予定していた。しかし、平成23年度に本学共同利用設備としてLC/MSシステムが導入され、それに伴い今後の効率的な研究計画遂行のため、使用予定LC/MSシステムを本学共同利用整備に切り替えた。この事により、LC/MSの初期的な条件設定を含めた条件検討が多岐にわたったため、研究計画の進行にやや遅延が生じた。しかしながら、LC/MSシステムを用いた分析が本学で実施可能となったため、今後の研究計画は効率的に遂行可能である。 上記に加え、種々のコンストラクトの作成過程において、サブクローニングの困難なものがいくつか存在した点、膜タンパク質の可溶化法の検討においての条件設定が多岐にわたった点も、研究計画の進行にやや遅延が生じた理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までにNPT4とPDZK1との結合が示唆されたので、今後は以下を行いPDZK1によるNPT4の機能制御の可能性を検討していく。(1)本年度に作成したコンストラクトを用いてGSTプルダウン法およびLC/MS分析によりNPT4とPDZK1の結合部位を明らかにする。NPT4のPDZモチーフとPDZK1の結合確認すると伴にPDZモチーフ欠損による結合への影響を検討する。また、PDZK1は4つのPDZドメインを有するため、どのドメインと結合すかを明らかにする。(2)In vivoにおけるNPT4とPDZK1の共局在と結合を検討する。腎尿細管細胞におけるNPT4とPDZK1の共局在を免疫染色法により、In vivoにおけるNPT4とPDZK1結合を免疫沈降法により明らかにする。(3)PDZK1によるNPT4の尿酸輸送活性と細胞内局在への影響を検討する。PDZK1過剰発現時およびノックダウン時のNPT4の尿酸輸送機能変化と細胞内局在変化を解析し、PDZK1によるNPT4の機能制御能を明らかにする。また、(4)尿酸存在下・非存在下における結合定数の変化および免疫沈降法を用いた共沈量の変化を検討すると伴に、既報のURAT1とPDZK1の結合定数との比較を行い親和性の相違を明らかにする。 (5)PDZK1による尿酸再吸収・排泄のバランス制御の可能性を明らかにする。NPT4とURAT1の両者を発現する安定発現細胞株を用いて、PDZK1過剰発現時およびノックダウン時の尿酸の細胞全体における吸収および排泄量を検討し、尿酸吸収・排泄バランスへ寄与を検討する。 以上より、PDZK1によるNPT4の機能制御を解明することにより、尿酸の排泄制御機構を明らかにする。くわえて、腎近位尿細管での尿酸の再吸収・排泄のバランス制御解明に迫る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の【現在までの達成度】に記載した通り、今後の効率的な研究計画遂行のため、使用予定LC/MSシステムを本学共同利用整備に切り替えた。この事により、LC/MSの初期的な条件設定を含めた条件検討が多岐にわたったため、研究計画の進行にやや遅延が生じた。これに伴い、LC/MSを用いたNPT4とPDZK1の結合部位解明に使用予定だったクロスリンキング試薬、消化酵素であるトリプシンおよびその他LC/MS関連試薬の購入を見合わせた。そのため、受領額累計と支出額累計との差額生じた。前述の遅延分の研究は、【今後の研究の推進方策】に記載した通り、次年度実施予定であり本年度の購入見合わせ分を次年度購入予定であるため、本差額分を次年度使用額として計上する。 上記以外の次年度研究費の使用計画を以下に記載する。研究経費で大きな割合を占めるものは、RNAやタンパク質調整、細胞培養などに必要な一般試薬、siRNAやPCR酵素などの分子生物学用試薬、免疫沈降法試薬、抗体およびRI試薬を含む生化学用試薬、遺伝子抽出・精製キットやRNA合成キットなどのキット類、スライドガラスやメスシリンダーなどのガラス器具、細胞培養用ディッシュやウェルプレートなどのプラスチック器具、実験動物の購入や飼料などを含む実験動物管理である。また、研究資料収集、研究成果発表および研究協力者との打合せのための旅費が必要となる。次年度は、本研究計画の最終年度になるため、研究成果発表費用(学術雑誌投稿料)が必要である。
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