2011 Fiscal Year Research-status Report
髄鞘形成におけるテニューリン4の機能解明と髄鞘関連疾患への応用を目指す研究
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23790979
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鈴木 喜晴 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 講師 (30596565)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 中枢神経系 / 髄鞘 / オリゴデンドロサイト / 髄鞘関連疾患 |
Research Abstract |
初年度は、テニューリン-4(Ten-4)の結合タンパク質の同定とシグナル伝達経路の解析を計画し遂行した。結合タンパク質のスクリーニングとして、マウスの脳と脊髄のライセイトと抗Ten-4抗体を用いた免疫沈降を行い、マススペクトロメトリーによる同定を様々な条件で試みた。しかし決定的な結合タンパク質(特にTen-4細胞外ドメイン結合タンパク質:Ten-4リガンド)の同定には至らなかった。一方、予備実験により細胞内結合タンパク質の候補に上げられていた分子に関する実験はほぼ計画通りに進んだ。中でもfocal adhesion kinase (FAK) は、抗Ten-4抗体を用いた免疫沈降にて共沈降され、且つオリゴデンドロサイト内で免疫染色による共局在が見られた。さらにTen-4欠損マウスの脊髄とTen-4をノックダウンしたオリゴデンドロサイトにてFAKの活性化に減少が見られ、Ten-4をノックダウンしたオリゴデンドロサイトにconstitutively active FAKをトランスフェクションすることによって、Ten-4のノックダウンによる分化阻害効果に改善(レスキュー効果)が見られた。また、Ten-4欠損マウスの髄鞘形成阻害は小径軸索に特異的であることが見つかった。このことは既に報告されていたFAKのノックアウトマウスの表現型でも見られることがわかった。これらの結果より、中枢神経系の髄鞘形成においてTen-4はFAKのシグナル経路を制御する分子であることが示された。これらをまとめた論文を現在投稿中である。今後は、引き続きTen-4リガンドの同定を進めるとともに、FAKやFAKのシグナル経路に関わる他の分子とTen-4の関係を明らかにすることで、髄鞘形成不全・脱髄性疾患の新規治療薬の開発への可能性を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度にはTen-4の結合タンパク質の同定とシグナル伝達経路の解析を計画しており、予備実験により結合タンパク質の候補に挙げられていたタンパク質(例:FAK)のTen-4結合活性やシグナル伝達に関する実験に関しては計画通り実験が進んだが、結合タンパク質のスクリーニングが未だ成功に至っていないため、特にTen-4細胞外ドメイン結合タンパク質(Ten-4リガンド)の同定はできていない。その理由として、実験の条件決定が予想以上に困難であったことが挙げられる。Ten-4の可溶化に関して、様々な界面活性剤を用いた方法やその他の方法にて至適条件の検討を行った。しかし初年度中に、結合タンパク質との結合を維持したままのTen-4の効率の良い可溶化の条件の決定には至らなかった。膜貫通タンパク質であるTen-4は基本的に可溶性が悪く、また、特にin vivoでは脂溶性が高い髄鞘部位に局在している可能性もあるためと考えられる。結合タンパク質の同定はマススペクトロメトリーによって行うため、その系で十分に検出できる程度のタンパク質量を調製できるように現在も実験条件を改良中である。一方で、FAKやその他の候補結合タンパク質の実験は計画通りに進んだ。その理由としては、以前より準備していた実験系(例:Ten-4欠損マウスやTen-4のノックダウン)がFAKやその他の候補結合タンパク質を導入した後も問題なく機能したことが挙げられる。FAKとの関連データは既にまとめて論文を投稿中である。また、前者のスクリーニングの実験が遅れた原因の一つとして、そのFAKの関連データを含む投稿中の論文の更正用の実験に予想以上の時間を要し、それを優先しなければならなたったことも挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Ten-4結合タンパク質のスクリーニングの条件確立を引き続き行い、且つ既に結合することがわかっている分子(例:FAK)については、予定通りその結合様式の同定を行っていく。結合タンパク質のスクリーニングについては、初年度に問題となったTen-4の可溶化の問題を含め、新たなより親和性の高い抗Ten-4抗体の選別や免疫沈降の際のビーズへの固定化の方法等にも改良を加えて、より好条件でのスクリーニングの実現を目指す。具体的には、これまで使用していた自作の抗Ten-4抗体に加えて、いくつかの市販の抗Ten-4抗体での免疫沈降も同時に試していく。そしてそのスクリーニングから結合タンパク質(特にTen-4細胞外ドメイン結合タンパク質:Ten-4リガンド)が同定された際には、速やかに計画通りの評価実験を行っていく。既に結合することがわかっている分子について、例えばFAKでは、まずTen-4とFAKが直接結合しているのか、間接的に結合をしているのかを明らかにする。直接的結合であれば、Ten-4のFAK結合ドメインの同定を試みる。間接的に結合をしているのであれば、どのような分子がアダプターとなっているのかを明らかにし、直接的結合の際と同様にその結合ドメインの同定を行う。これらはTen-4の細胞内ドメインとの結合が予想されるため、その結合ドメイン由来の合成ペプチド等での活性制御は困難と思われる。そこで、FAKを制御する既存の膜貫通分子(例:インテグリン)とTen-4との関連を調べ、Ten-4によるそれら膜貫通分子-FAKの活性化の分子作用機序を明らかにすることで、合成ペプチド等を用いた細胞外からの活性制御のアプローチ方法も探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度にて、研究協力者達の協力も得て、大まかな設備のセットアップは完了している。そのため次年度は、計画通り、細胞培養や分子生物学実験に必要な試薬や抗体、キット、プラスチック製品等の消耗品の購入に研究費をあてがう予定である。また、研究遂行に必須である研究成果の発表や研究協力者との情報交換のための参加費や旅費にも計画通りに研究費を使用する予定である。
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