2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790994
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
佐野 泰照 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (20379978)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / Aβ蛋白 / 血液脳関門 |
Research Abstract |
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease: AD)に特徴的な老人斑アミロイドはAβ蛋白からなり,Aβの蓄積がADの発症や進展に関与しているとするアミロイド仮説は現在ADの病因として広く受け入れられている.一方,LRP-1やRAGEなどいくつかの輸送担体が血液脳関門(BBB)を介したAβ蛋白の輸送に関与している可能性を示唆する報告が蓄積されてきており,注目されている.アルツハイマー病の新規治療法を開発するために,アミロイドβ蛋白(Aβ蛋白)のBBBを介した輸送機構を我々が新たに構築したヒトin vitro BBBモデルを用いて解明することが本研究の目的である.H23年度は,我々の樹立したin vitro BBBモデルに発現しているtransporterの発現をRNA干渉技術を用いて減少させ,当該transporterがAβのBBBを介した輸送に関わっているか否かを検討する,という手法で研究を進めた.まずP-gp, MRP-1, ABCG2,MRP-4の4つのtransporterについてRNA干渉実験を行った.実験条件の調整に多くの時間を費やしたが,P-gp, MRP-1, ABCG2の3つについて蛋白発現をknock downすることに成功した.当該transporterの発現が減少したBBBモデルと減少していないBBBモデル(control)のAβ蛋白輸送を比較した.その結果,ABCG2がAβ蛋白のBBBを介した輸送に関与していることが示された.その一方で P-gp, MRP-1に関してはAβ40蛋白のBBBを介した輸送への関与を示唆する結果は得られなかった.この知見は, Aβの脳内濃度を減少させるという新たなADの治療あるいはADの予防法開発に進展しうるという点で非常に意義深いものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の目標はRNA干渉技術を用いて,我々が樹立したin vitro BBBモデルに発現しているtransporterがAβのBBBを介した輸送に関与するかどうかを明らかにすることであった.当初RNA干渉の詳細な実験系を確立することに多くの時間がかかることが想定されていた.想定通り,各種transporterの蛋白発現の高効率のknock downを実現させるためのsiRNA実験の条件設定に半年以上の時間が必要であった.具体的には,播種する内皮細胞の数,siRNAの濃度,siRNAをトランスフェクションさせる際の細胞の密度,siRNAと内皮細胞の接触時間などの細かい条件設定が各transporterごとに必要であった.その結果,P-gp, MRP-1, ABCG2の3つについて蛋白発現をknock downさせることに成功した.結果,これらの3つのtransporterについてAβ輸送解析を実施することができた.LRP-1やRAGEについてもようやくsiRNA実験系が確立されつつあり,我々のin vitro BBBモデルでのAβ輸送への関与について今後解析予定である.以上,H23年度が終了した現段階ではおおむね順調に本研究は進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も我々が樹立したin vitro BBBモデルを用いて, AβのBBBを介した輸送システムの解析を継続していく.AβのBBBを介した脳外への排出に関与している輸送担体や脳内への取り込みに関与している分子の特定を行う.その一方で,すでに認可されている市販薬や植物由来成分などの物質のうち,AβのBBBを介した輸送に影響を及ぼす物質をできるだけ多く同定する.本研究で得られた結果がアルツハイマー病モデル動物の治療実験を経てヒトへの臨床応用へとつながっていくことを想定して,今後も研究を推進していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も我々が樹立したin vitro BBBモデルを駆使して,AβのBBBを介した輸送システムの解析を継続する.具体的には高血圧治療薬,高脂血症治療薬,抗炎症薬,中枢神経作動薬,抗生物質など,日常臨床で使用されている薬物や我々が日ごろ口にしている天然成分がAβのBBBを介した輸送に関与しているか否かの網羅的解析を行う.研究費は,これらの薬物や125-I- Aβ(ラジオアイソトープ試薬),細胞培養液,培養皿等の消耗品購入費用や研究成果の発表費用(日本神経学会,Society for Neuroscience)等に使用予定である.
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