2011 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病における膵β細胞Tcf7l2の生理的・病態生理的役割の解明
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23791017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高本 偉碩 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (60431871)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / 膵β細胞 / インスリン / Tcf7l2 |
Research Abstract |
2006年, 転写因子Tcf7l2は2型糖尿病感受性遺伝子の1つとして同定され,その結果は日本人においても追試されている.しかしながら,2型糖尿病の発症機序がTcf7l2の機能亢進によるものなのか,機能低下によるものなのかは,未だ議論があり明確な結論に達していない.そこで本研究では,Tcf7l2が膵β細胞で担う役割をin vivoで明らかにすることを目的として,Tcf7l2の機能を膵β細胞で低下させたモデル動物を作成し,その表現型を解析した.具体的には,Tcf7l2のdominant negative型変異 (DN-Tcf)をRIPプロモーター(Rat Insulin Promoter)の下流につなぐコンストラクトを構築しトランスジェニックマウス(RIP-DNTcf-Tg;以下Tgと略記)を作成した.膵島におけるDN-Tcfの発現量が内因性のTcf7l2の発現量の10倍以上あることが確認できた独立した3ラインを選抜・検討した.3ラインにおいてTg群は野生型(Wt)群と比較して体重は同程度であったが,随時血糖値は高値を示した.またインスリン感受性は同程度であったが,経口糖負荷試験ならびに腹腔内糖負荷試験を行うと, Tg群はWt群と比較してインスリン分泌低下を伴う耐糖能異常を呈した.膵β細胞に対するインクレチン作用を評価するために腹腔内糖負荷試験時にGLP-1受容体作動薬であるexendin-4を投与すると,Wt群と同様にTg群においてもインスリン分泌増加を伴う耐糖能改善効果を認めた.さらに,Tg群は膵組織像での膵β細胞面積の減少と膵臓インスリン含量の減少を呈した.以上から,in vivoで膵β細胞におけるTcf7l2は膵β細胞量の制御を通じて,個体としてのインスリン分泌能に重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は,独立した3ラインの遺伝子改変マウスの表現型の解析により,成体において,in vivoで膵β細胞におけるTcf7l2は膵β細胞量の制御を通じて,個体としてのインスリン分泌能に重要な役割を果たしていることを明らかにした.さらに,その分子メカニズムを明らかにすべく,遺伝子改変マウスの単離膵島を用いた遺伝子発現解析により,インスリン遺伝子に加えて,インスリンの転写や膵β細胞の成熟に重要なある遺伝子Aの発現が低下していることを見出した.これに一致して,出生直後のマウスでも成体と同様に膵組織像での膵β細胞面積と膵臓インスリン含量が減少していることを見出した.これらの知見は,Tcf7l2が転写因子として膵β細胞の発生・分化・成熟においても重要な役割を果たしている可能性を示唆するものであり,当初の計画以上に有意義な研究成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 膵β細胞機能・量の制御に対してTcf7l2が担う役割の解明:膵β細胞Tcf7l2遺伝子改変マウスに高脂肪食を負荷しインスリン抵抗性を惹起した条件下で,膵β細胞機能と膵β細胞量に関して解析を進める.また,単離膵島を用いた網羅的発現解析により同定し得たTcf7l2の下流に位置する鍵分子がin vivoでどのような挙動を示すのか,他の2型糖尿病モデル動物を用いて検証する.さらに鍵分子の発現や活性を調節する因子や化合物について検討を行い,新しい2型糖尿病治療法の開発につなげることを目指す.(2) 膵β細胞の発生・分化に対してTcf7l2が担う役割の解明:出生直後や胎生期の膵β細胞Tcf7l2遺伝子改変マウスについて解析を進め,Tcf7l2と膵β細胞の発生・分化の関係を明らかにする.(3)インクレチン関連薬の膵β細胞保護効果に対してTcf7l2が担う役割の解明:インクレチン関連薬を膵β細胞Tcf7l2遺伝子改変マウスにin vivoで長期投与した場合の耐糖能・インスリン分泌能・膵β細胞量の変化を検討し,膵β細胞保護効果におけるTcf7l2の役割を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する今年度の研究費はない.
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