2012 Fiscal Year Annual Research Report
2型糖尿病における膵β細胞Tcf7l2の生理的・病態生理的役割の解明
Project/Area Number |
23791017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高本 偉碩 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60431871)
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Keywords | 2型糖尿病 / 膵β細胞 |
Research Abstract |
Wnt/βカテニンシグナルの一翼を担う転写因子Tcf7l2は,2型糖尿病感受性遺伝子の1つとして同定されたが,2型糖尿病の発症機序がTcf7l2が関与する経路の機能亢進によるものなのか,機能低下によるものなのかは,未だ議論がある.そこで本研究では,Tcf7l2が膵β細胞で担う役割をin vivoで明らかにすることを目的として,Tcf7l2の機能を膵β細胞で低下させたモデル動物を作成し,その表現型を解析した.具体的には,Tcf7l2のdominant negative型変異(DN-Tcf)をRat Insulin Promoter(RIP)の下流につなぐコンストラクトを構築し,トランスジェニックマウス(RIP-DNTcf-Tg;以下DNと略記)を作成した.膵島におけるDN-Tcfの発現量が内因性のTcf7l2の発現量の10倍以上あることが確認できた独立した3ラインを選抜・検討した.3ラインにおいてDN群は野生型(Wt)群と比較して体重は同程度であったが,随時血糖値は高値を示した.またインスリン感受性は同程度であったが,経口糖負荷試験ならびに腹腔内糖負荷試験を行うと, DN群はWt群と比較してインスリン分泌低下を伴う耐糖能異常を呈した.膵β細胞に対するインクレチン作用を評価するために腹腔内糖負荷試験時にGLP-1受容体作動薬であるexendin-4を投与すると,Wt群と同様にDN群においてもインスリン分泌増加を伴う耐糖能改善効果を認めた.さらに,DN群は膵組織像での膵β細胞面積の減少と膵臓インスリン含量の減少を呈した.同様の表現型は,離乳時期ならびに出生直後のマウスでも認められた.以上から,in vivoで膵β細胞におけるTcf7l2は膵β細胞量と膵臓インスリン量の制御を通じて,個体としてのインスリン分泌能に重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
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