2011 Fiscal Year Research-status Report
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23791051
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
横田 健一 慶應義塾大学, 医学部, 特任研究員 (50424156)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | MR / エピゲノム / 高血圧 / アルドステロン |
Research Abstract |
ミネラルコルチコイド受容体(MR)はアルドステロンをリガンドとする核内受容体であり、MRの活性化は腎遠位尿細管におけるナトリウムの再吸収を通じて血圧上昇をもたらす。ところが、MR活性化において、エピゲノムを介した転写制御メカニズムは殆ど未知のままである。この問題を解明するために、293F細胞を大量培養し、生化学的アプローチとLC-MS/MSを用いた同定法により、新規MR相互作用因子の探索を試みた。その結果、新規MR相互作用因子として機能未知因子p150を同定した。P150は共免疫沈降法で、MRとリガンド依存性に相互作用することが確認でき、免疫染色により両者がラット腎遠位尿細管細胞および大腸上皮細胞の核においてMRと共局在することを確認した。P150の過剰発現により、MR転写活性が減少し、p150のRNAiにより、MRの標的遺伝子SGK1、ENaCαのmRNA発現レベルがいずれも上昇することから、p150はMRのco-repressorであると推測された。p150はそれ自体に転写を調節する酵素活性ドメインを有しないことから、蛋白質複合体を形成して機能していることが推測された。そこでp150安定発現293細胞を樹立し、p150相互作用因子の精製、同定を試みたところ、p150は転写抑制性の複合体であるNuRDと相互作用することが判明し、さらなる機能解析の結果、NuRDを介してMR転写活性を抑制していることが判明した。p150は近年特定のSNP変異が高血圧発症と深く相関するとの発表が相次いでいる。そこでSNP部位を解析したところ、SNPがenhancer領域である可能性が示唆された。さらにヒト正常腎組織を用いた解析により、SNPのタイプとp150発現量に有意な相関があることが示された。以上の結果から、p150がMRの転写活性を通じて高血圧発症に重要な役割を果たすことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの結果、MRの新規co-factorの同定が非常に高い精度で成功し、新規因子の機能解析を行ったところ、MRの転写を実際に制御し、高血圧発症への関与が推測される結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、細胞レベルでp150がMRのco-repressorとして機能し、MRの転写活性化を制御することで、高血圧発症に関わることが示された。今後p150での生体での役割を明らかにするべく、24年度はノックアウトマウスの作出に取り組む。すでに、ターゲティングベクター作出、ES細胞への遺伝子導入などが成功済みであり、現在キメラマウスの作出を行うべく、アグリゲーションを行っている。今後はヘテロノックアウト、ホモのノックアウトマウスおよび遠位尿細管特異的ノックアウトマウスを作出し、その表現型解析を行う。具体的には、8週齢になったノックアウトマウスをコントロール群とともに10匹づつ正常食、減塩食、高塩食で代謝ゲージ内で10日間飼育し、毎日体重を測定し、飲水量および蓄尿にて尿量も測定する。また、毎日非観血血圧測定計にてこれらマウスの血圧を測定する。また、orbital venous plexusから血液を採取する。血液および尿サンプルから血中尿中電解質、各種ホルモン、浸透圧など様々な生理学的パラメータを測定し、GFRや尿中ナトリウム排泄率、TTKGなどを算出する。観察終了後に麻酔下で解剖、臓器摘出を行う。またスピロノラクトン投与実験では、これら各群のマウスにアルドステロン拮抗薬であるスピロノラクトン 5mg/kg・body wtおよびプラセボを7-14日間連続投与し、体重、飲水および尿量を測定のうえ、同様な方法で血液、尿中電解質、各種ホルモン、浸透圧などの測定、血圧の測定などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在、ノックアウトマウスの作出に取りかかっており、それに関わる必要な試薬および餌などに研究費が必要となる。具体的にはES細胞を維持していくために必要な培地、血清などの試薬、シャーレなどの消耗品、フィーダー細胞の維持代、およびマウスの飼育に必要なケージや餌代、麻酔薬などの各種試薬や解剖用メスなどが必要である。H23年度に繰越金が生じた理由としては、研究者の所属が東京大学から慶應義塾大学に移動となり、移動にかかる期間、研究が不可能になったことによる。H23年度に施行予定であった研究はH24年度に行う予定に変更し、従って、繰越金もH24年に施行変更になった実験に充当する。
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Research Products
(2 results)