2011 Fiscal Year Research-status Report
心血管ホルモンによるミトコンドリアを介した酸素利用制御の病態生理学的意義の解明
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23791063
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮下 和季 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (50378759)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 運動耐容能 / 耐糖能 / 骨格筋 |
Research Abstract |
申請者はこれまでもミトコンドリア機能不全を基盤とした病態における心血管ホルモンの応用を目指した検討を続けてきた。本年度は加齢による骨格筋の変化、すなわち骨格筋加齢におけるミトコンドリア機能不全の意義の解明ならびに、骨格筋加齢が身体能力およびエネルギー代謝に与える影響を検討した。8、20、50、100週齢のマウスを用いて骨格筋量や身体能力、耐糖能、骨格筋単離ミトコンドリア活性の評価を行った。骨格筋量は20週齢で最も多く、20週齢以降加齢と共に減少した。マウス握力測定計を用いて評価した筋力も、骨格筋量と同様に20週齢で最も強く、20週齢以降加齢と共に低下した。マウストレッドミルにて評価した持久力は8週齢以降加齢と共に連続的に低下した。糖負荷試験およびインスリン負荷試験により評価した耐糖能も加齢と共に低下した。骨格筋量制御の主要因子であるTORC1 (target of rapamycin complex1)活性を評価したところ、20週齢以降TORC1活性は有意に低下しており、筋量の時間的経過と並行していた。骨格筋からミトコンドリアを単離して評価したミトコンドリア活性は持久力と同様に8週齢以降加齢と共に連続的に低下した。ミトコンドリア制御の主要因子であるAMPK活性はミトコンドリア機能と同様に8週齢以降連続的に低下した。以上より、加齢に伴うTORC1の活性低下が筋量の減少を、AMPK活性の低下がミトコンドリア機能障害を惹起していると考えられた。また、持久力および耐糖能の悪化には骨格筋量のみならず骨格筋ミトコンドリア機能の低下も密接に関与していることが示唆された。これらの研究成果は骨格筋加齢の予防および治療において骨格筋量の維持のみならず、骨格筋ミトコンドリア機能の重要性を示した点で非常に意義深いものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験の大半を行い、一定の結果および知見を得られた。本年度は、8週齢から100週齢までの各週齢マウスを用いた検討で、加齢に伴うTORC1活性の低下が骨格筋量減少を、AMPK活性の低下がミトコンドリア機能障害を惹起している可能性を示した。長期間の高蛋白食投与による検討で、長期の高蛋白食投与による慢性的なTORC1活性化がAMPKの抑制を介して骨格筋ミトコンドリア機能障害を惹起し、持久力低下や耐糖能悪化の原因となる可能性を示した。骨格筋ミトコンドリア機能が加齢による身体能力の低下およびエネルギー代謝の低下に密接に関与している可能性を示し、骨格筋加齢治療にミトコンドリア機能維持が重要である可能性を見いだせた点は、今後の研究の展開にも非常に有意義であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋ミトコンドリア機能制御における骨格筋量制御因子TORC1の意義を検討するため、TORC1の選択的阻害剤であるラパマイシンの投与実験をマウスを用いて行う。TORC1シグナルを制御することが知られている内分泌因子であるIGF1やグレリンが、加齢筋の骨格筋量, 筋力, ミトコンドリア活性, 持久力および耐糖能に与える作用を検討する。血管トーヌス制御に関与する心血管ホルモンが骨格筋加齢に与える影響も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品ならびにマウス飼育費に充当する。
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[Book] 日本臨牀2011
Author(s)
三石正憲、宮下和季、伊藤裕
Total Pages
5
Publisher
冠動脈疾患 「肥満・内臓脂肪」
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