2012 Fiscal Year Annual Research Report
心血管ホルモンによるミトコンドリアを介した酸素利用制御の病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
23791063
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮下 和季 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50378759)
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Keywords | ミトコンドリア / 心血管ホルモン / グレリン / 酸素利用 / 持久力 / 運動耐容能 / 筋肉量 / 身体能力 |
Research Abstract |
ミトコンドリアはエネルギー代謝の主たる場であり、その機能不全はメタボリックシンドロームなどの代謝障害に直結する。申請者は、これまで血管トーヌス調節により酸素供給を制御すると考えられていた心血管ホルモンが、骨格筋など末梢酸素利用臓器において、ミトコンドリアを制御することを見出し、そのことが酸素利用の調節と、肥満・糖尿病発症にも関与することを明らかにした。 これまでの検討で、加齢マウスにおいては骨格筋量のみならずミトコンドリア量が減少することを確認した。高齢者の筋肉量低下を予防する目的で推奨される高蛋白食が、筋肉量と筋力の維持には寄与するものの、ミトコンドリア生合成とミトコンドリア電子伝達活性を抑制し、持久力をむしろ低下させることを見出した。したがって加齢に伴う筋力・持久力低下の双方を高蛋白食により改善することは容易ではなかった。 そこで本年度の研究で、加齢に伴い血中濃度が低下する内分泌因子の補償による、高齢マウスの身体能力改善を検討したところ、GH/IGF1の分泌を介して筋肉量制御にも関与する、消化管ホルモンであるグレリンの投与により、骨格筋量と骨格筋ミトコンドリアの双方が増加して、筋量と持久力が改善することを見出した。一方、グレリンの受容体であるGHSRを全身で欠損したGHSR-KOマウスは、一見大きな異常を認めないものの、骨格筋量と骨格筋ミトコンドリアが減少し、持久力が大きく低下していた。GHSR-KOマウスにおいて骨格筋量が減少するメカニズムとして、蛋白合成を促進する分子であるS6K1の活性低下を、骨格筋ミトコンドリアが減少するメカニズムとして、ミトコンドリア生合成制御因子である、PGC1αの発現低下を見出した。 以上の結果より加齢に伴う身体能力低下において、消化管ホルモングレリンの投与は有用であり、筋力のみならず持久力も同時に改善すると考えられた。
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