2011 Fiscal Year Research-status Report
巨核球造血・血小板機能を制御する細胞内分子機構の解析-血栓症予防の可能性を探る-
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23791069
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上妻 行則 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90550145)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 血小板 / 巨核球 |
Research Abstract |
申請者のこれまでの研究成果から、巨核球造血及び血小板機能について、CD226が関与する可能性が示唆されていたので、血小板機能におけるCD226の役割について検討を行った。in vitro における血小板機能解析では、CD112/CD36またはCD155/CD36 fusion protein を血小板とpre-incubateさせた後の血小板凝集能は、collagen、convulxinなどのagonistにおいてコントロールと比較して有意に低下していたが、CD155/CD36においては有意な低下は認められなかった。そこで、CD226に対する抗体またはコントロール抗体をあらかじめpre-incubateした後、CD112/CD36と反応させ、凝集能を測定するとconvulxinにおいて低下した血小板機能が回復した。また血小板粘着能においてもCD112/CD36とcollagenまたはFibrinogenをコートした場合、粘着能が有意に低下していた。そこで、このCD226-CD112を介した血小板機能抑制のメカニズムを明らかにするために、western blottingを用いて情報伝達系の解析を行ったところ、CD112/CD36添加により、Akt及びp44/42のリン酸化レベルがコントロールと比較して低下していることが明らかとなった。次に、CD226の血小板機能への関与をさらに検討するために、塩化鉄を用いてCD226ノックアウト(KO)マウスまたは野生型(WT)マウスにおける血栓形成能を評価した。その結果、WTマウスと比較してKOマウスでは、塩化鉄による血管傷害後の血栓形成が速やかに行われていることが明らかとなった。以上の結果から、CD226は血小板機能を負に制御する分子である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血小板機能におけるCD226の役割について検討したところ、CD226-CD112を介した情報伝達系により血小板機能が抑制されている可能性が示唆され、研究はおおむね順調に進展している。しかし、本研究の目的は、血小板機能異常症及び血小板関連疾患の予防及び治療法の開発の可能性を探ることにある。つまり、本年度の研究で明らかとなったCD226-CD112の情報伝達系が生体内で本当に作動しているのか否か、かつマウス固有のものであるかそれとも、種を問わずに存在するものであるかを確認する必要がある。またCD226-CD112の情報伝達系が生体内で作動することを証明するためには、CD226 Ligand を発現する細胞の同定が必要である。従って、申請者はCD226 Ligand の発現についてヒト血管内皮細胞(HUVEC)を用いて検討したところ、CD112及びCD155の発現を確認した。しかしながら、マウス血管内皮細胞におけるCD112及びCD155の発現については未だ確認できていない。一方、巨核球造血におけるCD226の役割については、CD226が巨核球造血の比較的後期に発現すること、CD226 KO マウスに5-FUを投与した後の血小板の回復がKOマウスで亢進していることが確認された。以上より、血小板機能と同様に巨核球造血もCD226により負に制御されている可能性が示唆されたが、骨髄内におけるCD226 Ligand 発現細胞については単球及び線維芽細胞などの可能性が考えられるが、まだその同定には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
CD226-CD112の情報伝達系が生体内で作動することを証明するためには、CD226 Ligand を発現する細胞の同定が不可欠である。そこで申請者は可能性の高い血管内皮細胞におけるCD226 Ligand の発現の検討を行った。その結果、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)においてCD112及びCD155の発現を確認できたが、マウスにおける血管内皮細胞においては確認できていない。従って、flow cytometry及び磁気ビーズ法により血管内皮細胞を単離し、CD226 Ligand の発現を証明する、もしくはマウスの各臓器の薄切標本を作製し、免疫染色によりLigandの発現を確認する予定である。また巨核球造血においても、CD226-CD112情報伝達系が巨核球造血を負に制御する可能性が示唆されたが、骨髄内におけるCD226 Ligand 発現細胞についてはまだその同定には至っていないので、線維芽細胞などに焦点をあて、これらの細胞におけるCD226 Ligand の発現について検討し、巨核球造血におけるCD226-CD112系の関与についてさらに研究を続ける予定である。一方、がん患者において血栓が頻発し、がん転移において血小板が関与するという報告があるが、その詳細なメカニズムは未だ十分には解明されていない。CD226は血小板表面に発現する分子であることを考慮すると、がん細胞が転移する際には、血小板の膜タンパクであるCD226と結合し、遠隔臓器で血小板を介して結合する可能性も考えられる。従って、血小板を介したがん転移の分子メカニズムへのCD226の役割について、CD226 KOマウスに腫瘍細胞を投与し、転移巣数のカウントや腫瘍サイズなどの測定、CD226 KOマウス血小板と腫瘍細胞の接着能、腫瘍細胞におけるCD226 KOマウス血小板の凝集能への影響などを検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者は、これまで巨核球造血及び血小板機能に関する研究に従事してきたので、実験設備上の問題はなく、全ての実験機器は施設内に設備されているので、新たな設備投資の必要はない。従って、支給される研究費は、消耗品の購入及びマウスの維持・管理費用に費やされる。本研究は、CD226 KOマウスを研究材料として用いるため、実験を確実に推進させるためには、常時必要数のマウスを準備しておくことが必須である。従って、CD226 KOマウス及びWTマウスの維持・管理及びCD226 Ligandを発現する細胞の同定のために行う免疫染色やflowsytmetry、磁気ビーズ法に用いる抗体、遺伝子組換えマウスの繁殖・維持のために行うgenotypingに必要な遺伝子解析試薬(PCR関連試薬)、細胞や血小板などを分離する際に必要な遠心菅、採取した細胞及びがん細胞株などの培養に必要な培地、抗生物質、サイトカイン、フラスコなどの培養関連製品に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)