2012 Fiscal Year Research-status Report
巨核球造血・血小板機能を制御する細胞内分子機構の解析-血栓症予防の可能性を探る-
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23791069
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上妻 行則 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90550145)
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Keywords | 巨核球 / 血小板 |
Research Abstract |
申請者のこれまでの研究成果から、巨核球造血及び血小板機能について、CD226が関与する可能性が示唆されていたので、巨核球造血におけるCD226の役割を明らかにするために、CD226 ノックアウト(KO) マウスを用いて検討を行った。CD226 KO 巨核球を精製し、ストローマ細胞株 MS-5 と共培養したところ、野生型(WT)巨核球の胞体突起形成は阻害されたが、CD226 KO 巨核球では阻害されなかった。そこで、in vivo における血小板産生能を評価するために5-FUを投与したところ、CD226 KOではWT より血小板の回復が早く、骨髄内巨核球数が増加していた。そこで、CD226は巨核球からの血小板産生のみならず、造血幹細胞からの分化・成熟段階にも関与するのではないかと仮説をたて、以下の検討を行った。c-kit+/Lineage-細胞を採取し、トロンボポエチン(TPO)存在下で培養したところ、CD226 KOではWTと比較して、成熟巨核球が増加していた。さらにCD226のligand であるCD112のrecombinant proteinを用いて巨核球における情報伝達系を測定したところ、幾つかの分子のリン酸化の亢進が認められた。以上の結果から、CD226は血小板産生のみならず造血幹細胞から巨核球への分化・成熟に関与する分子である可能性が示唆された。血小板機能におけるcalpain-calpastatin 系の関与をcalpastatin KOマウスを用いて検討したところ、KO血小板において血小板粘着能が低下するなど血小板機能におけるcalpainの役割が明らかになってきた。そこで、血小板機能をcalpain-calpastatin系がどのように制御するのかについて現在もKOマウスの解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
巨核球造血におけるCD226の役割について検討したところ、CD226-CD112を介した情報伝達系により巨核球造血が制御されている可能性が示唆され、研究はおおむね順調に進展している。しかし、骨髄細胞においてCD226のligandであるCD112及びCD155を発現している細胞は何であるか?またそれらの細胞により巨核球造血がどのようなメカニズムで制御されているか?については未だ明らかに出来ていない。そこで、申請者は骨髄細胞を様々なマーカーで採取し、採取した細胞におけるCD112及びCD155のmRNA及びタンパクレベルでの発現を検討中である。また同時にCD112のrecombinant proteinを用いて巨核球造血における情報伝達系の解析を行い、CD226-CD112を介して幾つかの分子が巨核球造血を制御する可能性も見出した。そこで、現在CD226-CD112を介した巨核球における情報伝達経路のさらなる解析を行っているところである。また血小板機能においてもCD226の重要性を申請者は見出しており、現在はCD226のligandの発現を血管内皮細胞を中心に共焦点レーザー顕微鏡などを用いて検討中である。一方、血小板機能におけるcalpain-calpastatin 系の関与をcalpastatin KOマウスを用いて検討したところ、KO血小板において血小板粘着能が低下するなど血小板機能におけるcalpainの役割が少しずつ明らかになっており、現在もKOマウスの解析を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
巨核球造血及び血小板機能におけるCD226の役割を明らかにするためには、CD226 KOマウスの更なる解析と、CD226 ligand の発現細胞の同定が必須である。しかしながら、申請者のストローマ細胞株を用いた研究成果から、CD226 ligandはcell-cell junctionに発現する傾向が見られるが、その発現はきわめて微量であることなどが明らかになってきた。また、現時点で骨髄ストローマ細胞を正確に分離・精製するためのストローマ細胞特異的マーカーは見出されていない。従って、今後は骨髄内で巨核球分化、血小板産生を制御すると考えられるストローマ細胞を同定し、採取・分離ことを中心に研究を行うと同時に、CD226, CD112, CD155の発現は免疫系細胞でも認められることから、ストローマ細胞のみならず、免疫系細胞も含めた骨髄細胞を採取し、巨核球造血における役割も検討する予定である。さらにはCD226を介した巨核球造血における情報伝達系についてもflow cytometryなどを用いて検討する。また現在calpastatin KOマウスを用いた解析から、calpain-calpastatin 系が血小板機能に関与する可能性が示唆されている。今後はKOマウスの解析をさら進めるとともに、血小板凝集能や表面マーカーの変化など血小板機能におけるcalpainの役割や情報伝達系がどのように制御されているかについて検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(2 results)