2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23791078
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山根 利之 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30452220)
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Keywords | 造血幹細胞 / 造血発生 / 幹細胞 / 細胞分化 |
Research Abstract |
造血幹細胞は、限られた細胞寿命を有する成熟血液細胞に対し、自己複製能と多分化能を兼ね備え、唯一、造血系を持続的に維持することができる細胞集団である。造血幹細胞は、実験的には他個体への移植後、長期に渡って造血系を再構築可能な細胞集団と定義される。マウス胚発生期において、造血幹細胞は、胎齢10.5-11日に胚体内外において初めて検出される。しかしながらこれ以前に造血幹細胞がどのような分化経路を経て発生してくるのかについては未解明である。そこで本研究課題では、造血幹細胞がどのような発生経路を辿り出現するのか、また自己複製能が獲得される機構について解明することを目的とした。 これまでに研究代表者らは、造血幹細胞が出現する以前の胎齢9.5日に自己複製能を有さないものの造血幹細胞と同等の分化能を有する細胞が存在することを示しており、造血幹細胞の前駆細胞である可能性を示唆していた。本年度は、この細胞が自己複製能を持たないことを利用し、この多能性細胞と自己複製能を有する造血幹細胞間で、異なる遺伝子発現量を示す転写因子に注目して、自己複製能を付与する可能性のある候補遺伝子群の機能解析をすすめた。またパスウェイ解析から、シグナル伝達系、代謝系、また細胞周期に関わる制御系に差異があることを突き止め、自己複製能への関与を示唆した。 また、造血幹細胞が出現する以前に多分化能を有する細胞として、上述の胎齢9.5日の細胞よりさらに未熟な造血細胞して、リンパ球や骨髄球系譜への分化能に加え、胎仔期に一過性に産生される胎仔型赤血球への分化能も有する細胞集団を胎齢8-9日胚に同定した。このことは、造血系の発生は、これまで考えられた以上に多段階的に起こる複雑な過程であることを示した。造血幹細胞との関連についても今後検証したい。
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