2012 Fiscal Year Research-status Report
骨髄微小環境における骨髄腫細胞と単球及び骨髄ストローマの細胞との相互作用の解析
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23791084
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
池田 博 札幌医科大学, 道民医療推進学講座, 助教 (60570132)
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Keywords | 多発性骨髄腫 |
Research Abstract |
多発性骨髄腫患者の骨髄微小環境下における単球の役割を以下の方法によって明らかにしていくことを目的に研究を進めている。具体的な方法は以下に記す。 1.多発性骨髄腫細胞からそれぞれの細胞に及ぼす効果(増殖,分化,シグナル伝達系の変化)について,それぞれの細胞を認識する抗体を用いたフローサイトメトリー, ウェスタンブロティング,コロニーアッセイ法などを用いて検討した。2.単球と多発性骨髄腫細胞の共培養によってもたらされる相互増殖作用のメカニズムを明らかにした。具体的には単球と多発性骨髄腫細胞の共培養によってもたらされるサイトカインの分泌量の変化をサイトカインアレイとEnzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)をもちいて定量した。3.単球から骨髄ストローマ細胞や破骨細胞への分化に対する骨髄腫細胞の影響を検討した。本研究により,骨髄微小環境における骨髄ストローマ細胞や単球との多発性骨髄腫細胞との相互分化増殖作用の分子機序が明らかになってきた。これらの成果は化学療法によって増殖能の高い大多数の腫瘍細胞を死滅させても,増殖速度が遅い腫瘍幹細胞は抗癌剤感受性が低いために残存し,さらには抗癌剤抵抗性をも獲得して,再発,再燃に結びつくと考えられる.多発性骨髄腫でも同様であり,治療成績向上には,骨髄腫幹細胞自身,あるいは骨髄微少環境を標的とした有効な治療法の開発が求められる近年おおきなインパクトがある. またその結果については、日本癌学会、日本血液学会、アメリカ血液学会などで研究成果の報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者の骨髄採取液をFicoll Paqueで分離し,骨髄腫細胞はCD138マグネットビーズを用いて,単球はCD14 マグネットビーズを用いて採取する。骨髄ストローマ細胞は、定法に従って骨髄採取液の単核球成分を分離し、DMM培養液を用いて3週間培養しフラスコの底部に張り付いた細胞を使用する。1.単球と骨髄腫細胞との相互作用の解析:単球と多発性骨髄腫細胞の共培養を行い、それぞれの細胞の増殖能を3H-UptakeまたはMTT法を使用し解析する。また上清中の各種サイトカイン濃度をサイトカインアレイを用いて網羅的に解析し,変化が見られたシグナル伝達系についてはELISAで詳細に分析する。 2.骨髄ストローマ細胞と骨髄腫細胞の相互作用における単球の影響 多発性骨髄腫患者または正常人由来骨髄ストローマ細胞と骨髄腫細胞株を共培養し,上記のように各細胞の増殖能と上清中のサイトカイン濃度を単球存在/非存在時に比較測定する.また同条件で,各細胞をソーティングにより分離採取し,マイクロアレイによって遺伝子発現変化を解析する。以上により,単球と骨髄腫細胞の間の相互作用で活性化される新たなシグナル異常を明らかにする。 (3)治療抵抗性,進行性に関連した分子異常の同定 さまざまな病期,浸潤性の多発性骨髄腫患者由来骨髄ストローマ細胞を使用し,骨髄腫細胞株も薬剤感受性の異なる株を解析することで,予後,薬剤耐性に直接関連するシグナル伝達系,遺伝子発現異常の同定を試みる。さらに活性の見られたシグナル伝達系を阻害した際の骨髄微小環境における骨髄腫細胞への影響を分析し, 多発性骨髄腫の根治療法の開発を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度過程により明らかになった具体的な骨髄ストローマ細胞や単球と骨髄腫細胞との相互増殖作用を抑制する新規治療薬の検討を行う。具体的には現在使用されているもしくは、今後注目されていくであろう骨髄腫治療薬・ボルテゾミブ, レナリドマイド,サリドマイド,HDAC阻害剤 HSP90阻害剤 での治療により相互増殖作用やシグナル伝達系がどのように変化するか、骨髄腫細胞株および患者細胞を用いて解析し、その薬剤の相互増殖抑制作用について検索していく。さらにSCIDマウスに骨髄腫細胞株を皮下注射し担癌モデルを作成し、抗腫瘍効果を解析する。新規治療薬によってどの新規治療薬がシグナル伝達系にまた単球との共培養下において上昇しているサイトカインについては、治療前後におけるサイトカインの分泌量の変化をELISAを用いて解析していく。シグナル伝達系の変化についても新規治療薬の効果と治療薬の標的分子をあわせて検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多発性骨髄腫患者または正常人由来骨髄ストローマ細胞と骨髄腫細胞株を共培養し,上清中のサイトカイン濃度をサイトカインアレイ,ELISAで,細胞増殖をMTT法により,単球存在/非存在時に比較測定する.同条件で,各細胞をソーティングにより分離採取し,マイクロアレイによって遺伝子発現変化を解析する.さまざまな病期,浸潤性の多発性骨髄腫患者由来骨髄ストローマ細胞を使用し,骨髄腫細胞株も薬剤感受性の異なる株を解析することで,予後,薬剤耐性に直接関連するシグナル伝達系,遺伝子発現異常の同定を試み,多発性骨髄腫の根治療法の開発につながる基礎研究を目指す。抗体やELISAキットに関しては、使用期限が短いため、翌年度の繰り越しとなった。
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