2011 Fiscal Year Research-status Report
難治性リンパ系腫瘍の小胞体ストレス応答(XBP1)を標的にした分子標的療法の開発
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23791085
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
李 政樹 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00567539)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨髄腫 / XBP1 / T細胞性リンパ腫 |
Research Abstract |
難治性血液腫瘍である骨髄腫は形質細胞性腫瘍であり,過剰な抗体産生による小胞体ストレスにさらされ,生理的なUnfolded protein response (UPR)が活性化している事が報告されている.その中でも,ATF6経路およびXBP1の活性化が報告され,それらの阻害によるUPR機構の破綻は新規分子標的参入の可能性を秘めている。本研究では、骨髄腫の新規分子標的治療の開発を目的として、XBP1阻害活性を有する薬剤であるトヨカマイシンを用いて、骨髄腫に対する抗腫瘍効果を検討した。さらには、骨髄腫と同様の難治性リンパ系腫瘍である成熟T細胞性リンパ細胞株に関しても同様に検証した。その結果、トヨカマイシンは低濃度で十分な抗腫瘍効果を示していた。骨髄腫細胞株9株を用いて、トヨカマイシンの抗腫瘍効果をMTS assay法にて濃度依存的に調べたところ、24h.48hの暴露でともに100nMの濃度以下で十分な増殖抑制が観察された。また、高感受性を示す3株(OPM2, RPMI8226, ILKM2)におけるapoptosisを、低濃度のトヨカマイシン(30nM)投与下にてAnnexinV染色法にて検出したところ、高度なapoptosisの誘導が認められた。骨髄腫細胞株と同様に成熟T細胞性リンパ腫であるATLL細胞株も検証したところ、濃度依存的な増殖抑制が認められた。骨髄腫細胞株と同様に30nMの低濃度で効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画は、XBP1阻害化合物の難治性リンパ系腫瘍に対する抗腫瘍効果を、複数の細胞株を用いてスクリーニングする計画であったが、トヨカマイシンが骨髄腫および成熟T細胞性リンパ腫株の両者に対して強い抗腫瘍効果を示すことを同定し得たため、現在までの研究計画おおむね達成したと考えられた。他の薬剤(キノトリエキシン、トリエキシン)の難治性リンパ系腫瘍に対する抗腫瘍効果の検討がまだ十分になされておらず、今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
難治性リンパ系腫瘍の小胞体ストレス応答因子(XBP-1の活性化)を標的として、小胞体のホメオスタシスを破綻させる分子標的療法の開発を目的に、次年度以降は、下記の研究項目を予定している。1. XBP-1阻害化合物の作用機序の検討難治性リンパ系腫瘍に十分な抗腫瘍効果を示す化合物を同定後、その作用メカニズムについて解析する。活性型XBP-1の発現低下が引き起こす、小胞体ストレス応答機構・アポトーシス経路を含めた各種経路への影響をスクリーニングし、XBP-1阻害とアポトーシス誘導をつなぐバイオマーカーを同定を目標とする。2. 担がんscidマウスの系を作成し、XBP-1活性阻害化合物のin vivoでの効果を検討する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. XBP-1の活性阻害が小胞体ストレス応答機構及びアポトーシス経路に与える影響を調べる化合物に感受性を示す骨髄腫及びT細胞リンパ腫細胞株群の中で、感受性群および抵抗性群に分け、XBP-1の活性阻害(活性型XBP-1の発現抑制)とアポトーシス誘導能に相関性があるかどうかを検証する。さらには、XBP-1阻害による小胞体ストレス応答への影響及び致死的な細胞内ストレス(異常タンパクの蓄積)・アポトーシス誘導への詳細な経路を調べるために、小胞体ストレス応答経路、アポトーシス関連因子(ミトコンドリア膜障害・カスパーゼ系、デスレセプタ-系、Bcl2 family, BH3 only protein、IAP family等)、また異常タンパクの再生機能を有する小胞体ストレスシャペロン群などをwestern blot法やRT-PCR法でスクリーニングしていく。2. XBP-1阻害化合物の感受性・抵抗性に関与する因子の同定Genechip arrayを用いた網羅的なmRNA発現解析法を用いて、化合物の投与前後における発現解析の比較を行うことで、XBP-1阻害により影響を受ける関連pathwayの網羅的な検索を行う。感受性群と抵抗性群との比較で化合物のアポトーシス誘導能に関与する因子及び抵抗性に関する因子を同定する。小胞体ストレス関連以外の未知なpathwayの変化もスクリーニングにて同定し得れば、XBP-1の新たな機能等の解明にもつながり、感受性・抵抗性のバイオマーカーの同定にもつながると見込まれる。
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