2012 Fiscal Year Research-status Report
難治性リンパ系腫瘍の小胞体ストレス応答(XBP1)を標的にした分子標的療法の開発
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23791085
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
李 政樹 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00567539)
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Keywords | 骨髄腫 / XBP1 |
Research Abstract |
難治性血液腫瘍である骨髄腫は形質細胞性腫瘍であり,過剰な抗体産生による小胞体ストレスにさらされ,生理的なUnfolded protein response (UPR)が活性化している事が報告されている.その中でも,ATF6経路およびXBP1の活性化が報告され,それらの阻害によるUPR機構の破綻は新規分子標的参入の可能性を秘めている。 本研究では、骨髄腫の新規分子標的治療の開発を目的として、XBP1阻害活性を有する薬剤であるトヨカマイシンを用いて、骨髄腫に対する抗腫瘍効果を検討したところ、多くの骨髄腫細胞株が100nM以下の濃度で、増殖抑制およびアポトーシスが認められた。トヨカマイシンのXBP1活性阻害能は、骨髄腫細胞の恒常的なXBP1活性を阻害するだけでなく、ツニカマイシンやタプシガルギンなどのさらなる小胞体ストレス誘導剤で増強されるXBP1活性までも阻害することを示すことができた。トヨカマイシンによるXBP1活性阻害は、XBP1以外の他の小胞体ストレス応答(eif2のリン酸やATF6の活性化)に影響を与えないことから、特異的な反応と考えられた。また、骨髄腫細胞株群のなかでも恒常的なXBP1活性が強い細胞株ほど、トヨカマイシンによる感受性が強く、XBP1活性が弱い細胞株では低感受性であった。さらには、XBP1活性を有さない他の造血器腫瘍細胞株では、トヨカマイシンによる抗腫瘍活性はほとんど見られなかった。しかし、小胞体ストレス誘導剤投与によりXBP1を活性化させた状態では、抗腫瘍活性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の研究目標は、XBP1阻害剤による抗腫瘍効果の作用機序を探索することであった。XBP1活性阻害剤がXBP1活性阻害が特異的であること、恒常的に高いXBP1活性を有する細胞株はXBP1阻害剤の感受性が高いこと、XBP1活性阻害により小胞体ストレス関連性アポトーシス(CHOPの発現やカスパーゼ依存性アポトーシス)が誘導されることが示されたことにより、おおむね目標を達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
難治性リンパ系腫瘍の小胞体ストレス応答因子(XBP-1の活性化)を標的として、小胞体のホメオスタシスを破綻させる分子標的療法の 開発を目的に、次年度以降は、下記の研究項目を予定している。 1. 骨髄腫患者検体における、XBP-1阻害化合物の、XBP1活性阻害と抗腫瘍効果と作用機序の検討 2. 担がんscidマウスの系を作成し、XBP-1活性阻害化合物のin vivoでの効果を検討する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 骨髄腫患者検体における、XBP-1阻害化合物の、XBP1活性阻害と抗腫瘍効果と作用機序の検討 骨髄腫患者検体から骨髄腫腫瘍細胞の分離のため、CD138抗体ビーズを用いた分離。純化した腫瘍細胞に対するXBP1阻害剤の抗腫瘍効果は、MTSアッセイ法やアポトーシス検出試験で検証する。 2. 担がんscidマウスの系を作成し、XBP-1活性阻害化合物のin vivoでの効果を検討する。 scidマウスに骨髄腫細胞を皮下に植え込み、XBP1阻害剤を経腹腔内投与を行い、抗腫瘍効果を検証する。 昨年度の研究計画の中で、XBP1を恒常的に遺伝発現抑制した安定株をレンチウイルスの系を使って作成する予定であったが、XBP1の発現とXBP1阻害剤の感受性の間に十分な相関が見られたため、作成しなかった。次年度の骨髄腫患者検体からの骨髄腫細胞の純化(CD138抗体など)に使う研究費を充実させることとする。
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