2011 Fiscal Year Research-status Report
接着斑分子Hic-5欠損血小板を用いたインテグリン活性化の分子機構の解明
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23791090
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
金山 朱里 昭和大学, 医学部, 講師 (10338535)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Hic-5 / 血小板 / インテグリン |
Research Abstract |
脳梗塞、心筋梗塞など動脈血栓症の成因の一つに血小板活性化とそれに伴う動脈硬化性病変部位での血栓形成が挙げられる。血栓形成に関する機序に関しては、詳細は不明な点が多く血小板機能異常症の原因遺伝子や分子が明確にされていない症例も多い。血小板の凝集は、凝集に必須の接着リセプターであるインテグリンαIIbβ3が最終的に活性化されることで引き起こされる。αIIbβ3 の活性化は Inside-Out および Outside-In という二つの細胞内分子機構により制御されている。本研究で解析を行う Hic-5 は血管平滑筋細胞や血小板に高発現する細胞接着斑アダプター分子であり、Hic-5 が血小板血栓の形成制御に関与している可能性が浮上した。そこで本研究では血小板血栓形成の分子機構制御における Hic-5 の役割について検討を行った。この分野では近年、Talin、kindlin、RIAM といったインテグリン結合分子の一部が Inside-Out signal の主要調節因子であることが注目されている。この中で Talinは Hic-5 と同じく接着斑に局在し、かつ Hic-5 と結合することが既に報告されている。よって Hic-5 が血小板凝集の Inside-Out および Outside-In signal の制御に重要な役割を担っているとの仮説のもと、遺伝子改変マウスを用いて個体レベルでの出血能変化を測定した。その結果、Hic-5 欠損により出血時間の大幅な延長が見られたことから、Hic-5 が生体で血小板凝集能を制御する能力を有する分子であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血小板凝集および活性化に関与する分子は多く知られているが、個体レベルで実際に出血状態を変化させる特定分子に関する報告は少ない。本研究ではROS 下流の mediator 1分子のみに焦点をあて、アダプター分子であるHic-5による細胞接着制御機構が血管生理の制御において重要な役割を持つことを示すとともに、血栓形成を引きがねとして発症する動脈硬化性疾患に関与する接着シグナルの新たな分子的背景の一端を明らかにすることを目的とし検討を行った。平成23年度はHic-5 欠損による血小板機能の変化について、個体レベルでの出血時間延長という結果が得られ、生体の止血過程におけるHic-5の重要性が明らかとなった。この現象が血小板自身の凝集能抑制を介した変化であるか、次に洗浄血小板を用いた血小板凝集能検査により検討した。具体的には、Thrombin、collagen、U46619など複数のアゴニストを用い、濃度依存的も同時に検討した。凝集測定器はPA-200 (aggregometer, Kowa)を用いて凝集塊の大きさ、数を経時的に測定した。その結果、Hic-5欠損血小板では、Thrombin刺激特異的に凝集能が抑制されていることが明らかとなった。今年度は当初の計画通り、Hic-5欠損による個体レベルでの止血能変化を明らかにし、かつそれが血小板凝集能の変化に由来することを見出すことができた。次年度は、血小板凝集抑制メカニズムについて解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度はHic-5 欠損による個体レベルでの止血能変化や、血小板凝集能の変化が明らかとなったので、平成24年度は血小板凝集抑制メカニズムについて、まず血小板凝集の直接の担い手であるαIIbβ3 の活性化制御を中心に解析を発展させる。まずHic-5 欠損血小板刺激時に、αIIbβ3 の活性化が正常に起きているか抗CD41抗体、抗活性型 αIIbβ3 抗体(JON/A)を用いてFACS解析を行う。さらに、Hic-5 が血小板内のどのインテグリン下に局在しているかmagnetic beadsを用いた免疫沈降ウエスタンブロットにより調べる。この免疫沈降の系は既に確立されており、現在稼働している。さらに αIIbβ3 下の Hic-5 結合分子が Hic-5 欠損によりインテグリンとの相互作用に変化が起きるか、免疫沈降により他の分子の蛋白量変化を検討する。また、Hic-5 結合因子Talinはα2β1に局在し、活性化刺激依存的に αIIbβ3 下へ移動しインテグリンの活性化に関与することが明らかになっている。このような血小板内局在変化の可能性を考え、抗原性と微細構造の両方の保持能力が高いアクリル樹脂包埋による免疫電子顕微鏡法でこれら分子の詳細な細胞内局在を検討する。抗体に標識してあるGold colloidの直径を変えることで複数の分子の局在を同時に観察する。Gold colloid検出が効率良く観察できない場合は凍結超薄切片法とナノゴールド銀増感法を用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画として、まず血小板凝集能測定用アゴニスト、抗体(さらなるFACS解析用、免疫沈降反応用、ウエスタンブロット用および細胞免疫染色法用、免疫電子顕微鏡法用)、分子生物学的解析用試を購入予定である。またこれらサンプル解析の際、現有設備(蛍光顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等)を利用するための消耗品を購入する必要性がある。よって次年度は試薬費が大部分を占めるが、そのほかにも、コンディショナルターゲティングマウス作製のため、トランスジェニックとノックアウトマウスを繁殖、飼育し、系統を維持しなければならないので、SPF動物飼育管理費、およびマウス飼料、床敷ペーパークリーンを購入する。さらに平成23年度の研究成果を国際血管生物医学会で発表予定のため、参加するための旅費として利用する。昨年度はFACS解析用抗体の納品が年度を越えてしまったため、約抗体一本分の予算を次年度へ繰り越した。
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[Journal Article] m-Calpain induction in vascular endothelial cells on human and mouse atheromas and its roles in VE-cadherin disorganization and atherosclerosis.2011
Author(s)
Miyazaki T, Taketomi Y, Takimoto M, Lei XF, Arita S, Kim-Kaneyama JR, Arata S, Ohata H, Ota H, Murakami M, Miyazaki A.
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Journal Title
Circulation
Volume: 124(23)
Pages: 2522-32
Peer Reviewed
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