2011 Fiscal Year Research-status Report
インターロイキン‐21の分子機構の解明とその制御による免疫疾患の新規治療法の検討
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23791099
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
林 太智 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00466674)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / インターロイキンー21 / 末梢血単核球 / フローサイトメトリー / ICOS / CXCR5 |
Research Abstract |
本研究はインターロイキン(IL)-21のヒト自己免疫疾患における意義を明らかとし、その治療応用を検討する目的で研究を進めている。健常者や他の自己免疫疾患と比較し、全身性エリテマトーデス(SLE)患者では、末梢血においてIL-21、および、IL-21RのmRNAの発現が有意に亢進していることが確認できたことから、SLEにおいては末梢血でその解析が可能と考えられたため、SLEを対象に解析を行ってきた。 まず、FACSでIL-21を細胞内染色する系を確立し、SLE患者と健常者で末梢血におけるIL-21産生細胞を同定したところ、末梢血におけるIL-21産生細胞のメインはICOS(+)、CXCR5(+)のCD4(+)T細胞であり、濾胞性ヘルパーT細胞様の細胞であることが確認された。一方、それ以外の細胞からも一定のIL-21産生が確認され、共通するphenotypeの特定が望まれた。その特定のため、T-bet、Bcl-6、Blimp-1の発現をFACSで解析することを試みたが、容易ではなかったことから、ソートした細胞で定量PCRで確認することを検討している。 一方、SLE患者末梢血におけるIL-21mRNA産生亢進に関しては、現在までのところ、SLEと健常者でその産生細胞数に有意な差がみられていないことから、産生能に違いがあるものと考えている。末梢血においてIL-21産生細胞の同定ができたことで、in vitroのサイトカインや薬剤に対する反応性の違いの解析が可能となったことから、現在、その解析の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の前提となる、FACSによるIL-21産生細胞の測定系は比較的早期に確立できたが、その正確性を期すのに若干の時間を要し、これにより再解析を要したことが遅れの主因であったと考えられる。 また、末梢血におけるIL-21産生細胞が意外と多く、想定していたICOS(+), CXCR5(+), CD4(+) T細胞以外もそれなりのIL-21産生があったことから、そのphenotypeの特定のために追加の解析を要している。この点は想定の範囲内であり、当初の予定通りFACSでT-bet、Bcl-6など転写因子の解析を試みたが、この染色系の調整に難渋していることも遅れの原因の一つである。 このほか、震災、学内の異動、研究協力者の変更もあり、研究に若干の中断があったことも遅れに寄与していると考えられた。特に、ヒトを対象とするため、検体の確保にブランクが生じる恐れがあり、今後も注意していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では全体の計画に変更はなく、研究を推進していく予定である。 IL-21産生細胞数の解析に関しては、活動性のSLEでの解析が不足しており、追加の解析を行う予定である。IL-21産生細胞のPhenotypeを明らかにする点では、当初の予定通りPD-1、CD62L、CCR7、IL-21Rなどの発現をFACSで解析するとともに、転写因子に関してはソートした細胞の定量PCRで解析する。 in vitro刺激の反応性の違いの解析では、PMA/ionomycin、CD3+CD28のほかにICOSや追加のサイトカイン(IL-12,IL-21,IL-23など)刺激で、IL-21産生やIL-2、IFN-γ、IL-17、IL-4などのその他のサイトカインの産生、転写因子(STAT3、STAT4、c-maf、T-bet、RORcなど)の遺伝子発現、リン酸化など指標に反応性の違いをみるとともに、in vitroでIL-21シグナルに介入を試み、SLE患者での反応性の違いを解析したいと考えている。 また、IL-21産生細胞数、各刺激に対する反応性など、ここまでに得られた結果と臨床データと照らし合わせて統計学的解析を行い、病像や疾患活動性との関連を明らかにしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使い道は、FACSや定量PCRなどのアッセイに使用する抗体や専用試薬、細胞培養関連の消耗品やサイトカインなどの購入が中心となる。その他、種々の試薬やピペットなど消耗品も追加購入したいと考えている。 また、主な研究成果発表として、日本リウマチ学会総会・学術集会、日本免疫学会総会・学術集会に加え、可能であれば米国リウマチ学会を計画しており、これらの旅費や論文投稿の準備費用も計上したいと考えている。
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