2011 Fiscal Year Research-status Report
膠原病におけるtoll-like receptorシグナル抑制分子群の寄与の解明
Project/Area Number |
23791101
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川崎 綾 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30532816)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / 疾患感受性遺伝子 / SNP / TLR / LILR |
Research Abstract |
近年、自然免疫系が膠原病の発症や病態に関与することが明らかになってきた。なかでも、膠原病の病態上重要なI型インターフェロン(IFN)を誘導するtoll-like receptor (TLR) 7、TLR9の関与が強く示唆されている。TLR7およびTLR9シグナルに対して抑制的に働く遺伝子群の発現低下や機能不全が膠原病の発症や病態に関与する可能性が考えられることから、TLRシグナル抑制遺伝子群の膠原病の疾患感受性への寄与を検討することを目的として疾患関連研究を施行した。LILRA4はleukocyte immunoglobulin-like receptor(LILR)ファミリーに属する分子で、形質細胞様樹状細胞(pDC)に特異的に発現している。TLR7およびTLR9を介したI型IFN、炎症性サイトカイン産生を抑制する。LAIR1もpDCに強発現しており、I型IFN産生を抑制することが報告されている。LILRA4およびLAIR1遺伝子は19q13.4に隣接して存在している。データベースに登録されている日本人集団におけるアリル頻度および連鎖不平衡をもとにLILRA4-LAIR1領域のタグSNPを選択した。タグSNPについて、SLE 502例、健常対照群 550例を対象とした関連解析を行い、4SNPの関連(P<0.01)を検出した。4SNP間には連鎖不平衡は認められず、ロジスティック回帰分析を用いて互いの関連を調整した後も有意な関連が残ることから、それぞれのSNPが独立にSLEに寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画から遅れている大きな理由としては、東日本大震災の影響により実験の開始時期がおくれたことや、節電の影響により実験機器の稼働時間が大幅に制限されたこと、また、予定された研究費の全額が交付されるか否かが10月まで確定しなかったことから、それまでの期間、実験計画を縮小せざるを得なかったことなどがあげられる。また、交付申請書提出時の計画ではLILRA4, CLEC4C, IRF4遺伝子について解析を行う予定であったが、LILRA4に隣接するLAIR1も機能的に重要な遺伝子と考えられることから解析対象に加えた。そのためCLEC4C, IRF4の解析に遅れが生じている。LILRA4およびLAIR1はファミリー遺伝子間の相同性が非常に高く、LILRA4-LAIR1領域を特異的に解析する方法を確立するのに時間を要したことも原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1タグSNPを用いたLILRA4-LAIR1領域の関連解析により、LILRA4-LAIR1領域に存在する4SNPとSLEの有意な関連を見出したので、遺伝子の機能に影響を与え得るSNPの検出を試みる。次世代シークエンサーを用いて関連SNP周辺のリシークエンシングを行い、関連SNPと強い連鎖不平衡にあるSNPを探索する。検出されたSNPについて、SLE505例、対照健常群550例を対象とした関連解析を行いSLEとの関連を調べる。2関連SNPの遺伝子発現への影響を調べるために、リアルタイムPCR法を用いて遺伝子の定量を行い遺伝子型と発現量の関連を調べる。また、SNPの転写活性への影響を検討するためにレポーターアッセイを行う。3継続してCLEC4C、IRF4の関連解析を行う。4SLEとの関連が認められたSNPについて、RA(600例)、SSc(160例)を対象とした関連研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1当該研究費が生じた状況東日本大震災の影響により、研究費が全額交付されるかどうかが秋まで確定しなかった。また、節電の影響により、年度の前半は、実験計画を縮小せざるを得なかった。予定していたTaqMan genotyping assay法のかわりにDigiTag2法を用いて遺伝子型決定を行ったため、当初よりも低コストでの解析が可能となった。2翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画次世代シークエンサーを用いて関連が検出されたSNP周辺のリシークエンシングを行う。DigiTag2法の利用により節減が可能であった研究費を、次世代シークエンサー使用料および試薬購入費に充当する。リシークエンシングで見つかったSNPおよびほかの候補SNPの関連解析を行うために、試薬購入費およびプラスチック器具代として80万円を使用する。関連SNPの機能解析(発現解析、レポーターアッセイなど)の施行を目的に、試薬購入費、プラスチック器具代として60万円を使用する。そのほか論文掲載料として10万円を使用する。
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