2011 Fiscal Year Research-status Report
CD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞による自己反応性B細胞制御機構解明
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23791106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡村 僚久 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10528996)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 自己抗体 / 全身性エリテマトーデス / LAG3 / Egr2 |
Research Abstract |
平成23年度は、CD4陽性CD25陰性LAG3陽性 制御性T細胞(以下、LAG3 Treg)によるB細胞抗体産生抑制能評価、抑制に関わる分子の同定および、LAG3 Tregの誘導機序解明を行った。代表的な自己抗体産生による自己免疫疾患として、全身性エリテマトーデス(SLE)が知られている。先ず、SLEモデルMRL/lprマウスへコントロールMRL/+マウスより回収したLAG3 Treg, CD4陽性CD25陽性 Treg (CD25 Treg), Naive T細胞を移入し、経時的変化を評価した。その結果、LAG3 Tregのみ、自己抗体であるdsDNA抗体価の低下、蛋白尿および腎組織所見の改善を認めた。このことは、自己抗体産生を介した自己免疫疾患の治療応用には、LAG3 Tregの誘導が重要であることを示唆している。LAG3 Tregの誘導機序を明らかにする為、T細胞とB細胞の共通認識抗原に対する経口免疫寛容についても検討した。鶏卵リゾチーム(HEL)特異的B細胞受容体トランスジェニック(Tg)マウス (MD-4)と鶏卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞受容体Tgマウス(OT-II)を交配し、HEL-OVAを経口投与したところ、LAG3 Tregの誘導を認めたことより、LAG3 Tregは、T細胞、B細胞の共通認識抗原により誘導されると考えられた。さらに、LAG3 Tregが抑制性分子PD-L1を細胞表面上に高発現していることを同定した。Rag1欠損マウスへB細胞およびOT-IIマウスから回収したヘルパーT細胞を移入後、OVA-NP投与により誘導されるNP特異的抗体産生をLAG3 Tregは抑制したが、PD-1欠損マウスから回収したB細胞の抗体産生は抑制出来なかった。以上の結果は、LAG3 TregがPD-L1を介してB細胞による抗体産生を制御していることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、今日の治療法では確立していない抗原特異的な自己抗体制御機構の解明を目指している。平成23年度は、LAG3 TregによるB細胞抗体産生抑制能評価、抑制に関わる分子の同定および、LAG3 Tregの誘導機序解明を目的とした。ヒトSLEモデルMRL/lprマウスへの制御性T細胞の関与につき、LAG3 TregとCD25 Tregの養子移入を同時に比較解析することで、自己抗体産生制御においてLAG3 Tregが重要な役割を果たしているという知見を得た。また、その分化・誘導はT細胞、B細胞の共通抗原認識を介した抗原特異的なものであり、抑制機序はPD-L1を介していることを明らかにした。本研究成果は、2011年 第55回日本リウマチ学会総会・学術集会において高く評価されワークショップ賞を受賞した。CD25 Tregを欠損するIPEX症候群患者では、SLEで特異的な兆候をほとんど認めず、SLEにおけるCD25 Tregの分化、機能も報告により様々であり、一定の見解を得ていない。今回の検討では、自己抗体産生制御における、LAG3 Tregの役割を、その誘導機序、抑制メカニズム含め解明したことで、本年度の目標以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、LAG3 Tregは自己抗体産生制御において重要な役割を果たしていることおよび、その分化、抑制機序までを明らかにした。当研究室は、LAG3 Tregによる抑制能が転写因子early response gene-2 (Egr2)に規定されることを報告している(Okamura,T. 2009, PNAS 106:13974-9)。近年、T細胞特異的Egr2欠損マウスがSLEの病態を呈すること(Zhu. B, 2008, J Exp Med 205:2295-307)、Egr2はSLE感受性遺伝子の一つであることが報告され(Myouzen. K, 2010, Hum Mol Genet 19:2313-20)、SLEの発症機序におけるEgr2の関与が注目されてきている。Egr2はCys2-His2 Zinc-finger型の転写因子であり、Egr2以外にEgr1,Egr3,Egr4が報告されている。なかでも、NFATc2の標的遺伝子はEgr2とEgr3のみであり(Rengarajan. J, 2000. Immunity 12, 293-300.)、T細胞受容体刺激時の不応答性にはEgr2、Egr3が関与するなど(Safford. M, 2005. Nat Immunol 6:472-80)、他のEgr familyとは異なる多くの共通点を有し、Egr2、Egr3は相互に機能を補完しあうと考えられている。平成24年度は、抗体産生を制御するLAG3 Tregの規定因子につき、Egr2、Egr3の協働作用という視点から解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Egr2欠損マウスは菱能形成障害などで胎生致死となり、Egr3欠損マウスは知覚性運動失調を認める。このように、Egr2、Egr3は神経系の機能発現に強く関連していることより、T細胞におけるEgr2、Egr3の機能解析はCre-loxP遺伝子組換えシステムを用いたT細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウス(CKO)を用いて行う必要がある。平成24年度は、LAG3 Tregのマスター制御遺伝子として機能する可能性が高いEgr2, Egr3に関して、T細胞特異的な CKOマウスおよび、ダブルCKOマウスを作製する。具体的には、B6.CD4-Creマウスに、B6.Egr2-floxedマウスまたは、B6.Egr3-floxedマウスを交配する。また、レトロウイルスベクターを用いてEgr2およびEgr3を各CKOLAG3 Tregに発現させることで、LAG3 Tregによる抑制能が回復することを併せて確認する。LAG3 TregはPD-L1を介してB細胞を抑制することを確認しており(上述)、今後はChIP assayおよび、Luciferase assayを用いてPD-L1遺伝子のプロモーター領域におけるEgr2、Egr3の機能解析を行い、詳細に抑制メカニズムを解明する。さらに、上述CKOマウスLAG3 Tregのマイクロアレイ解析行い、抗体産生抑制機序に関連する候補遺伝子の検索を行い、更なる展開を模索する。上述計画を達成するためには、各種T細胞移入実験、FACS解析および細胞分取にあたり、抗体、磁気分離装置を用いる必要がある。経費の多くは、マイクロアレイ解析、ChIP assay、レトロウイルスベクター導入に関連したものとなるが、細胞のRNA抽出、cDNA合成、real time PCRによる遺伝子発現評価などに関連する諸経費を必要とする。
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