2011 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチにおける関節破壊予測因子の同定とテーラーメイド治療の実現
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23791120
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金子 祐子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60317112)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 関節リウマチ |
Research Abstract |
新規未治療患者から採取した血液を,比重遠心法によって単核球,多核白血球を分離し,得られた単核球をflow cytometryを用い,3-color解析によってT,B,NK細胞population分画や活性化T細胞,制御性T細胞について詳細に測定した.また,メソトレキセートによる治療を行われている患者をサブ集団として血清を用い,cytokine-chemokine multiplexを利用して,VEGF,IL-1b,IL-17A,soluble TNF receptor II,IL-6,IL-10,INF-g,MCP-1,TNFαについて経時的に測定した結果,メソトレキセートによってIL-6は低下するがTNFの反応は乏しく,骨破壊進行とも密接に関連することが示唆されている.さらに,分離した多核白血球からDNAを抽出し,HLA typingおよびSNP解析を行い,TNF阻害薬やIL6阻害薬の有効性・安全性とSNPsとの関係性を検討中である.解析対象のRA患者は,DR4およびshared epitopeが約5割に,抗CCP抗体が約8割で検出されるが,それらを超えてTNFさらに関節破壊と密接に関連するとされているDR4やshared epitopeとの関連性についても検討中である.また,サブ集団として,若年発症とは臨床上・免疫応答が異なることが経験的に言われている高齢発症関節リウマチについても抽出し,その臨床特徴とあわせてリンパ球細胞分画やサイトカインとの関係性から,高齢発症関節リウマチにおける特徴的免疫応答についても検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規未治療関節リウマチ患者の血清サイトカインとして高感度ELISA法でVEGF,IL-1b,IL-17A,soluble TNF receptor II,IL-6,IL-10,INF-g,MCP-1,TNFα測定してきたが,患者血清中に元来存在するリウマチ因子が,特に高値の場合に,測定されたサイトカイン値に干渉する可能性が認められたことから,測定前に予めリウマチ因子吸収等の検体処理が必要と考えられ,調整のための系の確立に時間を要し,さらにこれまでの測定結果についても値の検証と再測定を必要としたことから,サイトカイン測定計画に遅延が生じた.また分離した多核白血球からDNAを抽出し,治療効果予測のためにSNPを解析してきたが,この検討にしてターゲットする治療薬としてTNF阻害薬のみだけでなくIL6阻害薬を含めて検討を開始したことから,SNP選別抽出とプライマー作成に時間を要したため,計画に遅延が生じた.さらに,高齢発症関節リウマチについても,若年発症関節リウマチとの比較で,SNP解析,HLA typingや血清学的因子,リンパ球表面マーカーの相違を検討し,病態解明を行う予定であったが,高齢発症関節リウマチは治療介入がすでになされた状態での紹介受診が多く,未治療状態でのリクルートおよび検体収集に当初の予定よりも時間を要したことから,計画に遅延が生じた.次年度ではこれらを解消し実験を進めていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,分離した多核白血球からDNAを抽出する.DR4やshared epitopeの存在が関節破壊進行と関係したとする報告が海外を中心にあるが,日本人はDR4陽性が多いことに加えallele型多様性が高く議論の残るところであり,PCR/SSP解析によりHLA typing (HLA-A,B,DR,DQ,DP)を行う.海外または本邦で関節リウマチとの関連性が報告されているPADI4,SLC22A4,FCRL3,CUL1,RUNX1などの遺伝子多型についてSNP解析を行う.また治療介入後の単核球subset,VEGF,IL-1b,IL-17A,soluble TNF receptor II,IL-6,IL-10,INF-g,MCP-1,TNFαなどのcytokine・chemokine profile,自己抗体測定をリウマチ因子調整後に経時的に行う.免疫調整剤や免疫抑制剤を変更する際,疾患活動性が急激に変化した際には,臨時で血液を採取し,疾患活動性や治療にリンクしてリンパ球population分画とcytokine・chemokinを測定する.生物学的製剤使用患者に関しては,使用生物学的製剤に対するhuman anti-chimeric antibody,human anti-human antibodyについても測定する.これまでに指摘されているTNFモノクローナル抗体製剤に対するinfusion reactionと免疫グロブリンFcgamma受容体のgenotypeの関与についても検討し,有害事象発生や二次無効との関係性についても検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画に必要な設備備品は既に申請者が所属する研究施設にあるため,経費は消耗品購入と成果発表にあてる.本研究にかかる経費は,主に自己抗体測定,SNPやHLAtypingなどの遺伝学的情報測定,リンパ球表面マーカーおよび高感度ELISA法によるVEGF,IL-1b,IL-17A,soluble TNF receptor II,IL-6,IL-10,INF-g,MCP-1,TNFαcytokine・chemokine測定のための試薬および消耗器具等であり,主にこれらに充当される.これまでの実施計画において,患者血清中に元来存在するリウマチ因子が,特に高値の場合に,サイトカイン測定値に干渉する可能性が認められたことから,測定前に予めリウマチ因子吸収等の処理が必要と考えられ,調整のための系の確立に対して経費が必要となったが,測定に遅延が生じたことからELISAプレート購入費用等が繰り越された.またSNP解析についても治療ターゲットをTNF阻害薬のみならずIL6阻害薬まで広げて検討を開始したことから,SNP選別抽出とプライマー作成を行い,SNP解析については遅延が生じた.上述の理由により,高齢発症関節リウマチ患者のリクルートに時間を要し,実験計画に遅延が生じたことから,リンパ球表面マーカー測定等に必要な試薬,消耗器具の購入が繰り越された.次年度については,これらの問題点を解消し,順次サイトカイン測定,リンパ球population分画測定,SNP解析を行うための費用に研究費を充当する予定である.
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