2011 Fiscal Year Research-status Report
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23791129
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梶原 直樹 東京農工大学, 生物システム応用科学府, 助教 (70453917)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アレルギー / 炎症 |
Research Abstract |
Interleukin (IL)-16は接触皮膚炎や喘息といったアレルギー疾患の病態形成に関与することが示唆されているが、IL-16欠損マウスを使った詳細な解析は行われておらず、その役割には不明な点が多く残されている。研究代表者は、FITC誘導性接触皮膚炎の初期反応がIL-16欠損マウスで軽減されることを見出した。しかし、CD8陽性T 細胞由来のIL-16 の機能を探るため、Rag-2欠損マウスにIL-16欠損マウス由来のCD8陽性T 細胞を移植した接触皮膚炎モデルでは初期反応は抑制されるが、その後、遅発性の強い炎症反応が起き、ハプテン塗布後1 週間を過ぎるとほとんどのマウスが死亡した。この異常な遅発性の炎症反応時にマウス体内でどのような変化が起きているのかを調べるために、血清中の炎症性サイトカイン濃度を測定した。野生型マウス、Rag-2欠損マウス、野生型マウス由来のCD8陽性T 細胞を移植したRag-2欠損マウスと比較すると、血清中のIL-17A濃度がIL-16欠損マウス由来のCD8陽性T 細胞を移植したRag-2欠損マウスで有意に高い値を示した。また、血清中のIL-6濃度もIL-16欠損マウス由来のCD8陽性T 細胞を移植したRag-2欠損マウスで増加傾向にあった。血清中のInterferon-gamma及びtumor necrosis factor-alphaの濃度に有意な差は認められなかった。IL-1betaは検出限界以下だった。これらのことから、CD8陽性の制御性T 細胞から産生されるIL-16はIL-17AやIL-6の産生に対して抑制的に働き、接触皮膚炎における遅発性の炎症反応を制御していることをが明らかになった。本研究の成果より、アレルギー疾患の制御機構に関する研究がさらに進展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、(1)接触皮膚炎モデルにおけるRag-2欠損マウスへのIL-16欠損マウス由来CD8陽性T 細胞移植系で見出された炎症劇症化メカニズムの解明、(2)喘息モデルで見出されたIL-16によるIgE産生とIL-5産生の抑制メカニズムの解明の2項目を目標としている。平成23年度は(1)の点について、遅発性の異常な炎症劇症化の原因を、血清中のサイトカイン測定、血液・病理組織検査、マイクロアレイ解析によって明らかにすると同時に、Rag-2欠損マウスへのIL-16欠損マウス由来CD8陽性制御性T細胞の移入によって、IL-16 とCD8陽性の制御性T細胞の働きを検証する予定であった。研究機関の異動に伴う諸手続きや実験の準備などに手間取ったことから、平成23年度は血清中のサイトカイン測定までしか遂行できなかった。そのため、「やや遅れている」と評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は次の点について研究を進める。(1)接触皮膚炎モデルにおいては、血液・病理組織検査、マイクロアレイ解析によって、Rag-2欠損マウスへのIL-16欠損マウス由来CD8陽性T 細胞移植系で見出された遅発性の異常な炎症劇症化の原因を明らかにすると共に、移入実験によってIL-16 とCD8陽性の制御性T細胞の働きを検証する。(2)喘息モデルでは、IL-16 によるIgE 産生の抑制メカニズムについて、IgE 産生に対するin vitro でのIL-16 の影響を調べるほか、T 細胞やB細胞への影響について主に移入実験を行うことにより調べる。IL-5 産生の抑制メカニズムについては、IL-5 産生細胞群へのIL-16 の影響を調べる。また、関与が予想されるCD8陽性の制御性T細胞の移植による喘息モデルでのIgE、IL-5 産生への影響を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
接触皮膚炎および喘息モデルにおけるIL-16 の役割を評価するために、年間約240 匹の野生型マウスが必要であり、購入に36 万円の経費を要する。また、遺伝子改変マウスを含めたすべてのマウスの維持・飼育費用として年間44 万円程度が必要で、合わせて80 万円をマウスの経費として使用する。IL-16 の産生細胞同定や作用機構の解明には、免疫染色、FACS に使用可能な抗体、細胞分離のための磁気ビーズが必要であり購入経費として60 万円を計上する。ハプテン、細胞刺激のためのリコンビナントサイトカイン等の一般試薬を20 万円で、細胞培養フラスコ等のプラスチック消耗品を10 万円で購入し、使用する。その他に論文投稿掲載料、また、所属施設購読雑誌が極端に少ないことから学術雑誌・文献購読料を計上する。国内旅費、海外旅費はそれぞれ年1 回の学会参加費用として必要最低限の経費である。
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Research Products
(1 results)