2011 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児閉塞型睡眠時無呼吸症候群の診断基準の確立と病態解明、治療効果の検討
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23791157
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
杉山 剛 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (30436878)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 小児 / 睡眠時無呼吸症候群 / 睡眠呼吸障害 / 扁桃肥大 / アデノイド増殖症 / 簡易ポリソムノグラフィー / PSG / YATHES-3 |
Research Abstract |
小児の閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)はアデノイド増殖症や口蓋扁桃肥大が原因となることが多く、アデノイド扁桃摘出術(AT)により劇的に改善する。小児OSASは2-5%という高い有病率にもかかわらず診断基準が確立されていないため施設により検査、診断、治療基準は様々である。また小児OSASの認知度は未だ低く、未治療の患者が多く存在すると推測される。現在、小児OSAS診断のGold standardは成人同様ポリソムノグラフィー(PSG)であるが、乳幼児では被験者の協力が得られにくいことや、多数のセンサー装着によりPSGの実施は困難であることが多く簡易PSGによる診断基準の確立が望まれている。本研究では乳幼児OSAS診断基準の確立と病態解明、治療効果の検討を目的としており、初年度は以下の4項目を目的とした。すなわち、1.不快感の少ない検査装置(簡易PSG)を用いた乳幼児OSAS診断基準の確立と妥当性の検証、2.乳幼児OSASの血清バイオマーカーに対する影響について、3.乳幼児OSASに有用なスクリーニング法の確立、4.乳幼児の高次脳機能、循環器系へのOSASの影響を明らかにすることの4項目である。目的1では7歳以下のボランティアによる正常コントロール群のAHIからAHI>5をOSASの診断基準としたときの妥当性について、術前後のAHI変化などからその妥当性について検討した。目的2では早朝採血時の血清心房Na利尿ペプチド、脳性Na利尿ペプチドや早朝第一尿中の成長ホルモン等について検討を行った。目的3では独自の問診票YATHES-3を用いたスクリーニング法についてAHIとの相関、ROC曲線から得られた最適カットオフ値を用いた感度/特異度の検討を行った。目的4は行動チェックリストを用いた多動性、注意欠陥性などについてOSAS群の術前術後での変化を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における本研究は概ね予定通り順調に進んでいる。(1)「簡易装置を用いた乳幼児OSAS診断システムの確立」については簡易PSGでの診断基準の確立を目指し、正常コントロール群のAHI(無呼吸低呼吸指数)からAHI>5を治療(AT)適応のOSASとし、術前術後や、正常群との比較検討を行いAHI>5が診断基準として妥当であることを検証した。また術後3-6ヶ月の時点で患者家族に治療についてのアンケート調査を行い治療に対する満足度、治療後の改善点について検討し第10回国際小児呼吸器疾患学会で発表した。(2)については血清中の脳性Na利尿ペプチド、心房性Na利尿ペプチドについてOSAS群と非OSAS群とで比較検討し、第14回東京小児呼吸ケアHOTシンポジウムで講演を行った。(3)ではパルスオキシメーターを用いたスクリーニング法について検討した。酸素飽和度、心拍数などの呼吸、循環パラメーターの平均値、最大値、最小値、標準偏差等と前述の診断機基準を比較し、スクリーニングとして有効なパラメーターについて検証し第44回日本小児呼吸器疾患学会で発表し、現在同学会雑誌に論文投稿中である。さらに、問診票YATHES-3を用いたOSASスクリーニング検査の有用性を検討するため51名に本問診票を用いSHIとの相関や感度・特異度等について検討し第137回日本小児科学会山梨地方会で発表した。(4)OSAS児の注意欠陥、多動性について検討するため行動チェックリストを用い術前と、術後1、3,6,12ヶ月を比較検討した結果について近日中に学会発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度の結果を論文として投稿することも目標である。また、論文以外にも、研究会、学会、講演会などで得られた知見について広く発信し、小児OSASの認知度を上げ、患者側、医療者側ともに啓発していく予定である。また平成23年度に得られた臨床的データの裏付けとしてマウスを用いた動物実験を行いOSASの病態解明を目指し研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に得られたデータの解析や、論文投稿に関する費用として800000円を計画している。これは解析用の機材、ソフトの購入費や論文投稿の際の英文校正等の費用を含む。また、マウスの購入費やアクチグラム、食餌パターン解析などの機材の購入費として1000000円を計画している。また学会出張費として200000円、人件費、謝金として200000円を計画している。昨年度の繰越金は平成23年度に行うことが出来なかった血清バイオマーカーの解析費用であり、本年度実施予定である。
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Research Products
(5 results)