2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23791164
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤澤 泰子 浜松医科大学, 医学部附属病院, その他 (40402284)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 小児栄養 / 母乳 / 脂質生物学 / 脂肪細胞分化 |
Research Abstract |
平成23年度実施状況は以下の通りである(ただし、平成23年9月~平成24年3月まで産前産後休暇取得により補助事業遂行を一時中断した)。 1) 3T3-L1脂肪細胞培養実験系を確立した。2) 母乳の全乳および乳清(乳脂肪分を遠心分離にて取り除いた後、カゼインを超遠心操作にて取り除いた画分)と、対照としての人工乳を用い、3T3-L1前駆脂肪細胞への添加実験を施行したところ、母乳の全乳に限り、強い脂肪細胞分化作用を示した。次いで、Bligh&Dyer法にて母乳/人工乳より抽出した脂質成分を用いて同様の添加実験を行い、母乳中の脂質成分が、脂肪細胞分化作用を有することを確認した。母乳脂質による脂肪細胞分化作用は、前駆脂肪細胞と成熟脂肪細胞の両方に作用した。また標準的な脂肪細胞分化剤であるインスリン/デキサメサゾン/イソブチルメチルキサンチン(IBMX)の非存在下でも、母乳中の脂質画分は前駆脂肪細胞を成熟脂肪細胞へ分化誘導することを確認した。この作用は、インスリン/デキメサゾン/IBMXと相乗的に働き脂肪細胞を分化誘導した。母乳脂質中の各種遊離脂肪酸はPPARsの生体内アゴニストであり、上記の脂肪細胞分化効果を担う物質の候補として有力である。既報にて分化調節作用が報告されている、アラキドン酸を代表とするエイコサノイドに注目し、その作用阻害剤であるアスピリンにて前処理したのち、母乳抽出脂質の添加実験を行ったところ、その分化誘導作用は50%程減弱した。この結果は、エイコサノイドが母乳の脂肪分化作用に部分的に関与していると考えられるとともに、その他の複数の要素の関与が示唆される結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪細胞培養系が確立され、再現性のある結果の集積が可能になったことは、研究の安定した遂行において必須であり、評価できる。 母乳に含まれる脂質成分による脂肪細胞分化作用を発見したことより、研究の焦点がより絞られため、次年度以降の研究の方向性が定まり、初年度の進行具合としては順調であるといえる。 研究開始時に注目していた生理活性物質としての種々のペプチドが主に存在する乳清画分による脂肪細胞への効果が初年度に発見できなかったため、研究対象をペプチドから生理活性脂質へと変更した。これにより、幾つかの研究手法の追加、分析に関する適切な手法の再検討は必須事項であり、より明確な結果を提示するためにも次年度以降の研究の進行方法は重要な検討課題である。 しかしながら、当初2年間の研究計画であったが、平成23年度途中より3月まで産前産後休暇による研究中断があり、3年間の研究計画への変更申請が受理されているが、その初年度としての進展度は良好であり、当該期間内に研究成果の論文発表が可能であると予測される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)母乳脂質中に存在する脂肪細胞活性物質に関して、母乳脂質成分の更なる画分処理による候補物質の探索を行う。また作用点であると予測されるPPARsおよび脂肪酸受容体であるGPR40/120の阻害実験等(阻害剤の添加、siRNAによるノックダウン)を行い、母乳脂質に存在する脂肪細胞分化誘導物質の作用についてより詳細に検証する。候補となる脂肪細胞分化作用を担う脂質を以上の方法で選出した後は、母乳における定量法を確立し、脂肪細胞を用いたバイオアッセイを併用して、母乳脂質による脂肪細胞分化作用の中心となる脂質成分を明らかとする。 2)さらに、網羅的遺伝子発現の解析を行い、候補物質の探索の一助とする。 3)初年度の時点で、脂肪細胞に明らかな効果が発見できなかった乳清画分に関しても、注目すべきペプチドが各種含有されてあり、網羅的遺伝子発現解析を併用して検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品(試薬、細胞培養培地など)10万円、遺伝子解析用試薬(リアルタイムPCR試薬、各種インヒビター、siRNA)30万円、脂質分析用試薬(各種有機溶媒、カラムなど)25万円、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析 50万円 旅費 10万円 以上の概算で使用予定である。
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Research Products
(1 results)