2013 Fiscal Year Research-status Report
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23791164
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤澤 泰子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (40402284)
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Keywords | 母乳 / DOHaD / 小児肥満 / 脂肪細胞 |
Research Abstract |
平成25年度は、以下の点を明らかにした。1母乳脂質は脂肪細胞分化促進剤の効果を増強する。母乳を添加した群は標準的な分化誘導剤の非存在下においても、コントロール(標準的プロトコール;インスリン・デキサメサゾン・IBMXよって分化誘導された脂肪細胞)と同程度の成熟脂肪細胞マーカーの遺伝子発現を誘導した。それぞれの分化誘導剤単剤での添加によるaP2とCEBPα遺伝子発現は母乳脂質を添加すると相乗的に上昇した。このことは、母乳による分化誘導効果は標準的プロトコールの分化誘導に関するシグナル伝達経路とは異なるシグナル伝達を介することを示唆する。2母乳脂質は脂肪細胞分化誘導刺激として十分である。前駆脂肪細胞を、標準的プロトコールまたは母乳脂質のみで分化誘導処理後Day10まで培養して解析し成熟脂肪細胞のマーカーである遺伝子発現の有意な上昇を確認した。これは母乳脂質中には前駆脂肪細胞を成熟脂肪細胞に分化させるのに必要十分な作用を有する生理活性脂質が含有されることを示唆する。さらにマイクロアレイによる解析を行った。母乳脂質を添加した成熟細胞における複数の遺伝子発現変化のなかで、特にxStearoyl Coenzyme A desaturase 1 (SCD1)の発現低下は注目すべき結果である。SCD1は細胞内脂肪酸触媒酵素である。ノックアウトマウスは熱産生が亢進しインスリン感受性も上昇する。これまでの検討結果を踏まえて、母乳脂質による脂肪細胞への効果を担う要素として脂肪酸に着目した。母乳と人工乳では脂肪酸の組成が大きく異なる。特にn-6系とn-3系の配合比は母乳は栄養学的にほぼ理想的であるが、人工乳ではn-3系の割合が低い製品が多い。複数のパターンの脂肪酸混合液を成熟脂肪細胞に添加して解析し、母乳の脂肪酸組成に合わせた配合比による脂肪酸添加が強くSCD1を抑制することを見いだした。今後さらに解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年~24年にかけて、明らかにした項目 ①母乳は、全乳にて3T3-L1前駆脂肪細胞分化誘導作用を示し、脂肪分を除去するとその作用は消失した。また、この分化誘導作用は、標準的な脂肪細胞分化誘導剤(インスリン、デキサメサゾン、IBMX)による作用を増強した。このことは、母乳の分化誘導作用は、標準的な脂肪細胞分化誘導プロトコールによって活性化されるシグナル伝達経路(インスリンレセプター、デキサメサゾンレセプター)とは異なる経路を活性化していると予想される。②母乳抽出脂質成分は、標準的な脂肪細胞分化誘導剤の非存在下において、単独で前駆脂肪細胞分化誘導効果を示した。また母乳脂質によって分化誘導された脂肪細胞は、最終的に成熟脂肪細胞に特徴的な遺伝子群が十分に発現誘導された。につき、論文化し報告した。 平成25年は、さらに母乳脂質に特有な脂肪細胞への効果に注目して、マイクロアレイによる解析を行い、幾つかの遺伝子発現の変化を明らかにした。特に母乳脂質によるSCD1遺伝子発現の低下は、母乳の抗メタボリック症候群作用を説明しうる変化であり、今後更なる検討を行う。また母乳中の脂肪酸組成に着目した実験においても、母乳の脂肪酸組成に合わせた配合比による脂肪酸添加が、もっとも強くSCD1を抑制することを確認した。よって、研究の目的にそった研究成果をおおむね順調に上げられていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1脂肪酸混合液による成熟脂肪細胞への添加実験を進行させ、もっとも強く抗メタボリック効果を発揮する配合比や成分比を検討する。また、そのシグナル伝達につき解析を進める。 2母乳に含有されるペプチド成分による脂肪細胞への効果につき検討が不十分である。超遠心操作によりペプチドを多く含むホエイ成分を抽出し、まずは網羅的解析法によりその効果の動向を確認する。さらに、遠心操作によりペプチドを分画し、脂肪細胞に効果を及ぼすペプチド成分が多く含まれる分画を見つけて、解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1消耗品の使用額が予定より少なかったため。予定していた製品からより安価な製品への変更などを行い、予定額より小額の支出となった。2海外学会への参加を行わなかったため。他のエフォートとの関係などにより海外学会への参加を見合わせたため、予定していた旅費が支出されなかったため。 1脂肪酸を用いた、脂肪細胞への添加実験の遂行のために消耗品を中心に使用する。2母乳中のペプチドによる脂肪細胞への効果に関する検討を進行させる。網羅的解析としてマイクロアレイを施行して遺伝子発現変化の動向を確認する。
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